集中治療室において溢水やAKIに対して、腎代替療法(RRT:Renal Replacement Therapy)は確かな有効性を持ってよく施行されています。
RRTの中でも、循環動態の不安定な患者の全身管理が必要な集中治療室では、
循環に対する影響が比較的緩徐な持続的腎代替療法(CRRT:Continuous RRT)が選択される事が多々あります。
そのCRRTには幾つか方法が存在しますが、それぞれの特徴について紹介します。
CHDF
例:血液流量100mL/min、透析液流量600mL/hr、濾過流量800mL/hr、補液流量200mL/hr
この設定では除水はしていません。
自尿がある患者や、血管内ボリューム不足により脱血が難しい場合などにはこの様に除水0の設定で行います。
【除水量=濾過流量−(透析液量+補液量)】で表せます。
透析液流量600mL/hrは言い換えると10mL/minなので、透析液流量500mL/min程で行うHDに比べ、いかに緩徐であるかわかります。
この緩徐さが血行動態の安定を維持しています。
CHDFを行う目的は、拡散による小分子量物質の除去、濾過による中分子量物質、大分子量物質(低分子蛋白)の除去、除水であり、
集中治療室では最もよく導入されるCRRTです。
小分子量物質をより除去したい場合は透析液流量を上げ、中〜大分子量物質をより除去したい場合は濾過流量と補液流量を上げます。
CHD
例:血液流量100mL/min、透析液流量800mL/hr、濾過流量800mL/hr、補液流量0mL/hr
CHDでは補液は行いません。
CHDを行う目的は小分子量物質の除去にあります。
高K血症・高アンモニア血症・尿毒症・循環動態が不安定であり他に問題のない慢性透析患者
などが適応となり、この場合にはCHDを選択します。
CHF
例:血液流量100mL/min、透析液流量0mL/hr、濾過流量800mL/hr、補液流量800mL/hr
CHFでは透析液流量は0mL/hrに設定し、除水と補液のみで行います。
CHFを行う目的は中分子量物質〜大分子量物質(低分子蛋白)の除去にあります。
集中治療患者で、β2ミクログロブリン・エンドトキシン・炎症性サイトカインなどを積極的に除去したい場合はCHFを選択します。
注意しなければならないのは膜寿命の劣化の速さです。
後希釈CHFの場合にはダイアライザーで血液の濃縮が行われるので通常よりも早期に膜が詰まってしまう場合があります。
適応疾患以外の要因
CRRTを行う上では、上記に述べた適応疾患以外にも、保険適応を考慮してCHDF・CHD・CHFの選択をしなければなりません。
CHDFの保険適応では血液濾過用補充液は1日15〜20Lまでとされています。
つまり透析液流量と補液流量を足して20L/day=830mL/hrまでとしなければなりません。
小〜大分子量物質まで幅広く浄化し、かつ除水も行いたいのであればCHDFを選択し、
例えば、透析液流量500mL/hr、濾過流量900mL/hr、補液流量300mL/hrの設定にします。
この設定であれば100ml/hrの除水をかけ、保険適応内の条件で血液浄化を行えます。
小分子量物質を積極的に除去したいのであればCHDを選択し、
例えば、透析液流量800mL/hr、濾過流量800mL/hr、補液流量0mL/hrの設定にします。
濾過流量を900mL/hrにすると除水をかけることも可能です。
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