【使い分け】ダイアライザー(透析膜)の種類と特徴など解説します。

ダイアライザー(透析膜)

 
血液透析ではポンプを用いて体外に取り出した血液を、人工腎臓の役割を果たすダイアライザー(透析膜)に通すことで血液中の不純物を浄化します。

ダイアライザーにはたくさんのな種類があり、特徴も様々です。

あたなの施設では何を基準にダイアライザーの選択を行っていますか?

各ダイアライザーの特徴と私の働く病院での使い分けを説明したいと思います。

ダイアライザー(透析膜)の種類

ダイアライザーの種類は大きく2種類に分けられます。

それは
① セルロース系膜
② 合成高分子系膜

の、2つです。

それぞれに特徴があり、セルロース系膜は機械的強度が強く、概ね均一な膜構造を持つ対称膜とされています。

一方で合成高分子系膜は非対称膜です。

この様な膜では内部の多孔性やグラディエント構造の支持層と表面付近に存在する緻密層の二重構造からなり、前者が膜の機械的強度を与え、後者が透水性、溶質透過性などの物質移動を規定します。
 
 
患者血液にとって膜や回路は異物であり、それと接触することにより治療中に様々な生体反応が生じます。

代表的なものとして
① 補体の活性化(complement activation)
② 一過性の白血球数の減少(leukopenia)

が、知られています。

これらの生体反応の少ない膜が生体的合成(biocompatibility)に優れていると言われます。
 
 

セルロース系膜

RC(再生セルロース)

・親水性に優れ、機械的強度は高い。
・小分子物質の除去能に優れるが、低分子蛋白の除去に劣ります。
・しかし補体活性作用による一過性の白血球減少が起こりやすく、現在はほとんど製造されていません。
 
 
 

CTA(セルローストリアセテート)

・均一な膜構造を持つ対称膜であり、機械的強度が高い。
・親水性で抗血栓性に優れる。
・小分子物質の除去能に優れるが、低分子蛋白の除去に劣る。
・透水性・溶質透過性は、ポリスルホンなどの合成高分子膜に比べて劣ります。

【製品(製造メーカー)例】:UTフィルター(ニプロ)
 
 

合成高分子系膜

PS(ポリスルホン)

・透過性・透水性に優れ、長時間の使用にも劣化しにくい。
・小分子量物質から低分子蛋白・β2-MGまで、幅広い物質の除去能に優れる。
・しかし、アルブミン漏出に注意しなければならない。
・ポリビニルピロリドン溶出によるアレルギー反応に注意が必要だが、比較的安全に使用できる。
・私の勤務している病院では、導入期や特に問題のない患者さんへの第一選択として使用しています。

【製品(製造メーカー)例】:APS-EA(旭化成メディカル)
 
 
 

PMMA(ポリメチルメタクリレート)

・タンパク質吸着特性により、炎症性サイトカインの除去に優れる。
・これにより、透析中の皮膚掻痒感(痒み)のある患者さんに対し使用してみることがある。
・生体適合性にも優れているが、濾過量が多いと早期に詰まりやすい。

【製品(製造メーカー)例】:東レフィルトライザーNF(東レ・メディカル)
 
 
 

PES(ポリエーテルスルホン)

・透過性・透水性に優れる。
・環境ホルモン様物質がPS(ポリスルホン)に対して少ない。
・アルブミン漏出に注意しなければならない。

【製品(製造メーカー)例】:PES-esoタイプ(ニプロ)
 
 
 

PEPA(ポリエステル系ポリマーアロイ)

・高い吸着性能がありエンドトキシン吸着の効果を持つ。
・これにより、ETRF(エンドトキシン除去フィルター)として使用できる。
・生体適合性に優れる。
・小分子量物質から低分子蛋白・β2-MGまで、幅広い物質の除去能に優れる。
・アルブミンの漏出が少ない。

【製品(製造メーカー)例】:PEPA ダイアライザー FDZ(日機装)
 
 
 

AN69(アクリロニトリルメタリルスルホン酸ナトリウム共重合体)

・ハイドロゲルによる非常に高い親水性を持ち、陰性荷電による炎症性サイトカイン吸着に優れている。
・アルブミン漏出が極めて少ない。
・感染による二次性腎不全の患者さんによく使用します。
・抗血栓性にも優れますが、膜が飽和してしまうので長時間の使用は出来ません。

【製品(製造メーカー)例】:H12ヘモダイアライザー(バクスター)

 
 
 

EVAL(エチレンビニルアルコール共重合体)

・補体・免疫系に対する影響が軽度である。
・プラズマリフィリングによる透析効率がよい。
・抗血栓性にも優れているので、血栓の形成が顕著な方、ヘパリンを増量してもACTが延長しない方に対して選択してみます。

【製品(製造メーカー)例】:KF-C(旭化成メディカル)
 
 
 

PAN(ポリアクリロニトリル共重合体)

・透析中の一過性の白血球減少、及び保体活性が少なく、生体的合成に優れる。
・フサン(ナファモスタットメシル酸塩)は吸着される。
 
 

最後に

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いかがでしたでしょうか。

近年の透析膜の質の向上により、どの膜でも良好な治療が行えている傾向にあります。

しかし患者さんによっては透析膜の種類の違いによって大きく経過が異なってくるので、患者さんの状態・透析膜の特徴を
照らし合わせて考え、最も良いと判断されるものを選択して使い分けてください。
 
 
続いては、透析を行う上で欠かすことのできない抗凝固薬の種類と特徴についてまとめましたので、参考にしてみてください。

 
 
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2 件のコメント

  • おかちゃん より:

    初めての質問です。宜しくおねがいします。
    岡井さんの施設ではCHDFを行う際、どのようにして膜選択を行いますか?ここは見ると言う注意点があれば是非教えて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

    • 岡井さん より:

      ご質問ありがとうございます。
      当院ではCHDF施行する際、単に機械的除水を目的とするのであれば、PS膜を第一選択で使用する事が多いですね。
      注意点と言う程でもないのですが、血栓ができやすい傾向にある患者では、生体適合性の良いCTA膜を使用する場合もあります。
      次に感染傾向にある患者の場合では、吸着能に期待してAN69ST膜を使用する事があります。

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