こんにちは、臨床工学技士兼、透析技術認定士の岡井です。
先日Twitterにて集中治療室に勤務している看護師さんより、血液浄化療法のCHDFについてアラームや対処法などの質問を受けました。
小さなことでも疑問を持って考えてみる姿勢は大事です。
せっかくですので、同じ疑問を抱いている方がいらっしゃるかも知れないので、ここで回答をシェアしたいと思います。
目次
脱血不良のアラームが鳴った際、対処法として生食を投与することはありますか?
結論からお答えしますと、脱血不良のアラームが鳴った際、一時的な対処法として透析回路から生食を流すことはよくあります。
この生食とは、特にCHDF回路のプライミングで使用し残った生食を使用します。
(と言いますか私の場合、この様なCHDF開始時に脱血不良時が起こってしまった場合の対処法として、あえて少しだけ生食を残しています。)
理由は2つあります。
1つは循環ボリュームが足りていないこと。
この場合とりあえずプライミングで使った生食を入れて血管を拡げ、少しでも回る様に努めます。
ただし、その場しのぎの結果になることも多いです。
もう1つはピローの収縮を直すためです。
脱血不良をピローの収縮により検知する装置を使用していて、ブラッドアクセスの先当たり等で脱血不良が起こっている場合、これを改善しない限りポンプは止まったままになってしまいます。
このピローの収縮を膨張し直すために、生食を送ります。
CHDFの各アラーム値はどのような基準で設定していますか?
CHDFのアラームの設定は各施設のやり方に準ずることが多いと思います。
当院では基本的にはコンソールの基本設定で開始し、患者さんの状態によって変えた方がいいかなと思うときはその都度調節します。
例えば右心不全やPS(肺動脈狭窄症)などでCVPが高い患者さんの場合、返血圧はどうしても高くなってしまいます。
そんな時には医師と相談して返血圧上限アラームを高めに設定したりしますね。
ちなみに当院で使用しているCHDFコンソールのアラーム設定画面はコチラ。
脱血ライン・返血ラインの血栓によるアラーム時の対処法を教えて下さい
脱血ラインが血栓で閉塞してしまうことは稀です。
もしそうなってしまいポンプが回らない事態になってしまった場合は、一時的にCHDFを中断します。
そしてCHDF回路をプライミングし直し、再導入する必要があります。
対して、返血ラインが血栓閉塞しアラームが鳴る事はよくあります。
返血ラインでも特にVチャンバーに血栓ができてしまう事が多く、血液を返血できなくなりアラームがなる訳です。
この場合では返血圧上限アラームが鳴り、ポンプが停止しますね。
こうなってしまってポンプが回らない事態になってしまった場合でも、一時的にCHDFを中断します。
そしてCHDF回路をプライミングし直し、再導入する必要があります。
膜が目詰まりしたらヘモフィルターだけ交換することはありますか?
ヘモフィルターだけ交換することはあまり無いんじゃないかなと思います。
次のヘモフィルターを準備するためにはどのみち新しくプライミングしないといけないですし、ヘモフィルター交換用の回路というのは販売されていません。
仮にあったとして、新たにヘモフィルターだけプライミングしても、ヘモフィルターだけの交換の際、血液がこぼれたり気泡が入ったりで美しくないですよね。
それならいっそ1回返血して回路ごと交換した方がいいです。
気泡検知したらポンプは停止しますか?その時の対処法はどうしたらいいでしょうか?
ポンプが停止するかどうかは気泡検出の場所によって変わります。
返血ラインで気泡が検知されたなら全てのポンプが停止します。
透析液ラインまたは補液ラインで気泡が検知された場合は、どちらかのポンプは停止しますが血液ポンプは停止しません。
(もちろん装置の設定にもよります。)
対応は気泡の確認、気泡の除去、そして忘れてはならないのが原因の究明です。
たとえその場の気泡を除去しても原因が改善されていなかったら、すぐにまた気泡検出で同じことの繰り返しになってしまいますからね。
・気泡検出器が適切な位置にあるか?
・回路の三活がオープンになっていないか?
・回路とヘモフィルターの接続はきちんとしているか?
・サブパックが空になっていないか?
・ドリップチャンバーの液面は適切か?
など確認してみるといいと思います。
稀に回路のプライミング不良でも起こり得るので、開始前に確認することも非常に大切です。
CHDFとCHDは何が違うのでしょうか?
この質問は職場でもよく聞かれます。
結論からお答えしますと、一番の違いは補液を行っているかどうかです。
言葉の説明になるのですが、CHDFは日本語では「持続的血液透析濾過」です。
対してCHDは「持続的血液透析」です。CHDでは濾過を行いません。
濾過をすることで何が変わってくるのかと言うと、ズバリ、中分子量以上の物質の除去効率が大きく違ってきます。
中分子量以上の物質とは、具体的にはビリルビンやβ2ミクログロブリン、炎症性サイトカインなどです。
CHDFとCHD・CHFの違いについてはコチラの記事を参考にしてみて下さい。
最後に
皆さんの職場でも同じ様な経験や疑問を持った方がいるはずです。
疑問を持つことはとてもいいことだと思います。
ほったらかしにせずに、しっかり考えてみて下さい。
装置の内部の設定が原因の場合もありますので、分からない場合は思い切ってあなたの施設に勤務している臨床工学技士に聞いてみるのも手だと思います。
もちろんこの記事の内容も是非参考にしてみてください!
CHDF施行中の看護や管理のポイントについてはコチラの記事も参考にしてみてください。
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CHDFについてわかりやすくまとめてあります。オススメです!
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