【DOAC】心房細動に対する抗血栓療法について

心房細動とDOAC

前回の記事の続きです。

DAPTによる抗血小板療法に関連して、心房細動による血栓対策としてのDOACについても勉強してみました。

心房細動に対する抗凝固療法としてDOACは一般的ですが、心房細動を罹患している患者さんがACSを合併し、PCIによりステントも留置された場合、血栓対策はどうなるのか。

得た知識をまとめましたのでシェアしたいと思います。

心房細動で血栓が出来る理由

心房細動は心房内において電気信号が無秩序に入り乱れ、細かく興奮(痙攣)する不整脈です。

これを発症すると心房が正常で規則的な収縮と拡張の動作をとれなくなるので、心房内で血液の滞留(よどみ)が起こり、血が固まりやすくなります。

これによって出来たものが血栓です。

中でも左心耳は血栓の好発部位となっています。

心房細動の合併症として最も心配なのは、血栓による脳梗塞です。

左心房に血栓ができた場合、その血栓があるタイミングで左心室へ流れ、さらに大動脈弁を経て脳の血管まで進み、詰まってしまうと脳梗塞となってしまいます。

これを予防するために長時間持続する心房細動が確認された場合は、抗血栓療法を行う必要があります。
 
 

心房細動に対する抗血栓療法DOAC

今まで心房細動に対する抗血栓療法は、抗凝固薬であるワーファリンでした。

しかし現在DOAC(直接型経口抗凝固薬)の普及で変わってきています。
 
 
2020年に改訂された不整脈薬物治療ガイドラインでは、僧帽弁狭窄症及び機械弁置換後の心房細動を「弁膜症性心房細動」、それ以外の全て(生体弁置換後も含む)を「非弁膜症性心房細動」とし、非弁膜症性心房細動については心房細動の重症度を表すCHADS2スコアが1点以上で全DOACが推奨とされています。
 
※CHADS2スコア
C(心不全)、H(高血圧)、A(年齢 ≧ 75y)、D(糖尿病)、S(脳卒中 or 一過性脳虚血発作)
0点:低リスク
1点:中等度リスク
2点以上:高リスク

 
 
また、可能な限りワーファリンよりもDOACを用いることが推奨クラスⅠとして明記されました。

弁膜症性心房細動については、現時点ではDOACの適応はなく、ワーファリンのみが推奨されるとあります。

ちなみにワーファリンを用いた抗凝固療法の評価は、PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)をモニタリングする事で行い、管理目標値は高齢者と若者(70歳未満)の区別なく1.6〜2.6とされています。

DOACでは採血結果と臨床症状の間の関連性が明確でなく、目標値を設定することが困難なことからモニタリングは不要とされている様です。
 
 

DOACの種類と使い分け

・一般:ダビガトラン 商品名:プラザキサ
・一般:リバロキサン 商品名:イグザレルト
・一般:アピキサバン 商品名:エリキュース
・一般:エンドキサバン 商品名:リクシアナ

 
 
どのDOACを選択するかは、意見が分かれるところでしょうか。

1日1回の服用なのか、2回内服が必要なのか、の違いが大きく、患者さんが内服ルールを守れるかが重要となる様です。

また、どの薬も腎機能障害のある患者さんの場合は使い辛く、
・CCr(クレアチニンクリアランス)が15mL/分未満
・または、すでに維持透析が導入されている患者さん

での使用は禁忌となっています。

中でもプラザキサは、CCrが30mL/分未満での使用も禁忌となっています。(それ以外のものは投与可能)
 
 
DOACの種類

DOACの使用例
<<不整脈薬物治療ガイドライン 2020年改訂版より引用>>
 

PCIを施行した患者が心房細動であった場合

前回の記事の記事の通り、PCI後はDAPTにより抗血小板薬を2剤併用するのがセオリーとなっています。

しかし、PCIによりステントを留置した患者が心房細動を罹患している場合はどうなるのか?

単純に考えると、PCIによるステント血栓症の予防にDAPTを行い、心房細動による心房内血栓の予防に抗凝固薬を服用する、いわゆる3剤療法を導入すればいいのかと思う人がいるかも知れません。

実は勉強する前の私がそうでした(汗)。
 
 
確かにひと昔前までは、心房細動持ちの患者さんにPCIを施行した場合、DAPT+抗凝固薬を継続するという抗血栓療法が行われていました。

しかしWOEST試験では、3剤(アスピリン+クロピドグレル+ワーファリン)よりも、2剤(クロピドグレル+ワーファリン)の方が出血性イベントも少なく、ステント内血栓閉塞イベントも少なかったと報告されています。

岡井さん
3剤よりも2剤の方が抗血栓の面でも優れていたのは意外でした!
 
 
ACTIVE-W試験においては、心房細動に対してDAPTと言う強力な抗血小板療法を行なっても脳梗塞や塞栓症の予防効果は抗凝固療法に及ばないことが示唆されています。

2020年 JCS フォーカスアップデートガイドラインを見てみると、ACSに対してPCIを施行した患者が心房細動を合併していた場合の、PCI後の抗血栓療法の具体例が書かれていました。

要約すると、
・ステント留置後2週間(だいたい入院中)は、DAPT+抗凝固薬、の合計3剤。

・その後の約1年間はチエノピリジン1剤+抗凝固薬1剤、の合計2剤。

・1年以降は抗凝固薬単独。※ただし高出血リスクや血栓リスクを考慮する。

と、されています。
 

 
 


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