【アブレーション】イリゲーションがいる場合、いらない場合の違いと意味

アブレーションのイリゲーションカテーテルについて

 
カテーテルアブレーションは不整脈の根本治療として年々症例数が増えてきていますね。

そんな中ある看護師さんから質問を受けました。

「イリゲーションの準備がいる場合とそうでない場合の違いってなんですか?」

その違いと理由について解説していきます。

イリゲーションの意味

まず、イリゲーションとは何なのか、その意味を調べてみたいと思います。

Googleで意味を検索してみると、

irrigation:灌漑(かんがい)、灌水、洗浄法

とありました。

日本語としてはあまり使う場面の少ない言葉だと思いますが、具体的には「水を流す」という意味で使われる言葉のようです。

医療の現場、特にカテ室では、不整脈に対する電気的心筋焼灼術で使用されるアブレーションカテーテルの種類を指す言葉として使われることがあります。
 
 

イリゲーションカテーテルとは

イリゲーションカテーテルとは、焼灼用に使うアブレーションカテーテルの先端チップの部分から生食を還流させることのできるタイプのことです。

これに対し、生食を還流することのできないアブカテをノンイリゲーションタイプと言います。
 
 
 
従来のアブカテにはノンイリゲーションタイプのものしかありませんでした。

焼灼を行う際は、先端チップに設定された電力が流れ組織の焼灼を行うのですが、この時アブカテの先端チップも自らの電力で発熱してしまいます。

通電時間が長くなり先端チップが過剰に発熱してしまうと、組織の過剰焼灼や先端チップに触れた血液が血栓となってしまう可能性もあるので、自動で電力がセーブされてしまいます。

しかしそれでは焼灼が甘い箇所が出てきますよね。
 
 
 
そこで開発されたのがイリゲーションタイプのアブカテです。

先端チップから生食が流れ出てくるので、焼灼中も先端チップを冷却してくれます。

これで出力を均一に維持することが可能となりました。
 
アブレーション,イリゲーション
 
また、生食の中にヘパリンを付加することで、より血栓の形成を予防することも可能になっています。

イリゲーションが必要な場合

イリゲーションタイプのアブカテのメリットは、
・先端チップが冷却されて出力を一定に維持できる事

・ヘパ生を還流させることで血栓形成の予防を促す事 です。

この理屈から考えると、左心系をターゲットに焼灼を行う場合はイリゲーションタイプを使用する必要があります。

具体的に言うとAFでのPVI(肺静脈隔離術)やPSVTのAVRT、WPW症候群A型などが挙げられます。
 

 

イリゲーションが不要な場合

 
逆にイリゲーションタイプのアブカテのデメリットとしては、還流液が心内にそのままプラスされ、血管内ボリューム過多となってしまう事です。

不整脈治療を受けにカテ室に入室された患者さんは、健常者に比べて心機能が低下している場合が多いので、過剰な水分負荷は避けた方が患者さんにとって優しい治療と言えます。
 
 
なので、焼灼部位が右心系であり、水分バランスに注意したい患者さんの時はノンイリゲーションタイプのアブカテを使用しましょう。

具体的にはPSVTのAVNRT型、VT、PVCの最早期興奮部位が右室で確定している場合

などです。
 


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