【NO吸入療法】アイノフローの画面の見方とアラーム対処法

 
みなさんの働く施設では、NO吸入療法を行う際アイノフローを使用していますか?

アイノフローはリアルタイムで吸入NO濃度の調整を行い、同時に測定・表示をしてくれるNO吸入療法の管理を行う上で必須と言っても過言ではない有能な装置です。

今回はそんなアイノフローについて、モニターの見方やアラームの対処法について紹介していきます。

アイノフローの基礎

アイノフローとは

アイノフロー(正式名称:アイノフローDS)は、医療用のNOガスボンベとガス供給装置が一体となっている一、NO吸入療法用の一酸化窒素ガス管理システムです。

人工呼吸器回路にNOガス回路を組み込む事で人工呼吸器の吸気フローを検知し、それに応じたNOガスを供給する事ができます。
 
 
人工呼吸管理をされている患者であっても、自発呼吸の有無やその時の呼吸状態によって換気量は変動します。

換気量が変動している環境下でNOガスの投与量が一定だと、吸入されるガス濃度は一定ではなくなってしまいますよね。

アイノフローでは、上記の通り人工呼吸器の吸気流量を検知してそれに応じたNOガスを供給してくれる様に制御されていますので、患者が吸入するNO濃度は基本的に一定となります。
 
アイノフローのイメージ
 
さらに人工呼吸器の吸気回路の患者口元から、吸気の一部をサンプリングしているので、アイノフロー本体のモニター画面を見れば患者が吸入しているNO濃度を一目で確認する事ができます。

⚠️ただしサンプリングガスの採取量は毎分230mLですので、分時換気量の少ない新生児などに使用する場合は、人工呼吸器に表示される吸気の一部は患者の換気に関与していないことを念頭におく必要があります。

モニターに表示される情報はNO濃度だけでなく、O2濃度、NO2濃度も同時に表示されています。

特にNO2(二酸化窒素)は酸素と結合した有毒ガスであり、大量に吸入してしまうと呼吸器障害を引き起こす事があるので、慎重に監視します。
 
 

肺高血圧症とは

肺高血圧症は肺動脈の血管抵抗が高く、平均肺動脈圧として25mmHgを超えている状態を言います。

肺高血圧では、息切れ、倦怠感、動悸、むくみなどの症状が出るほか、慢性化すると右心不全を引き起こします。
 
 
新生児では胎児循環から新生児循環に切り替わる過程で肺血管が攣縮し、十分なガス交換が行われず低酸素血症を引き起こすものもあります。

これは新生児遷延性肺高血圧症と呼ばれています。

この様な肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全や心臓手術周術期における肺高血圧症に対して、肺血管抵抗を下げる目的でアイノフローを使用します。

NO吸入療法の適応については以下の記事を参照。

 
 

モニター画面の見方

サンプリング値とアラーム表示

アイノフローモニター1

アイノフローのモニター画面は割とシンプルで見やすいグラフィックになっています。

また、全画面タッチ式となっているので、感覚的に操作しやすいです。
 
 
見る項目として一番重要なのはサンプリング情報で、常時実測しているO2濃度、NO2濃度、NO濃度が表示されています。

NO濃度値は、設定しているNO濃度と解離していないかを確認します。

O2濃度は基本的に人工呼吸器に設定している濃度とあまり変わりありませんが、NOを負荷しているので全く同じというわけでもありません。

数%のズレでしたら誤差範囲内と考えて問題ありません。

NO2は、投与されたNOガスが回路内の酸素と結合してできた窒素化合物(二酸化窒素)です。

NO2は少量であれば吸入しても問題ありませんが、サンプリング値として3〜5%を超えない様に管理しましょう。
 
 
それぞれに上限/下限値を設定する事ができ、設定値を超えるとアラームで教えてくれるので便利です。

アラームが鳴ったらモニター画面中央(図では、患者情報未入力と表示されている場所)にアラームの種類が表示されます。

また、アラーム履歴ボタンで過去のアラームを確認することもできます。
 
 

インジェクターモジュールとサンプルライン

アイノフローモニター2

インジェクターモジュールとは、人工呼吸器の回路に組み込む部分です。

このパーツで人工呼吸器の吸気流量を検知し情報をアイノフロー本体に伝える事で、吸入NO濃度が一定になる様にNO投与量が調整されます。
 
 
サンプルラインは患者が実際に吸入しているガスを正確に反映するために、なるべく患者口元に近い吸気回路に接続します。

⚠️注意点として、吸気回路は加温加湿されたガスが流れるので多少なり結露しています。

この結露水がサンプルラインに流れ込むと正確に濃度測定を行う事ができなくなるので、なるべく水を採取させない様にサンプルラインの入り口は上向きに接続しておくとこれを予防できます。
 
 

アラームの種類と対処法

初回設定のアラーム

NO濃度の上限/下限アラームは、初回のみ、設定したNO濃度の±50%に自動で設定されます。

例えば初回にNO濃度を20ppmに設定した場合、高濃度アラームは30ppm、低濃度アラームは10ppmに自動で設定されます。

その後はモニター画面の上限/下限アラームの項目をタッチし、コントローラーを回して任意の設定に変更する事が可能です。

サンプル測定値が設定した上限/下限から外れると、アラームが鳴り、モニター画面にてそれぞれの項目が赤く光ります。
 
 

発生しやすいアラーム

・サンプルライン/フィルター不良アラーム
・モニタリング失敗アラーム
・液体トラップボトル満水アラーム

経験上、これらのアラームが比較的よく鳴っている印象です。

これらの3つのアラームは、サンプリングラインの水詰まりが原因となっている事がほとんどです。

人工呼吸器の加温加湿されて出来た結露がサンプリングラインに引き込まれ、これが根詰まりを起こすと上手くサンプリング出来ずにアラームが鳴ります。

またその結露がアイノフロー本体に侵入する事を防ぐため、トラップ用の小さなボトルも付属しているのですが、これも一杯になる事があります。

これらのアラームが鳴った時は、サンプリングラインの交換や、ボトルに溜まった結露水を捨てることで対処します。
 
 
 
・NO、NO2、O2、センサー不良アラーム

これはサンプルにてモニタリングされた各種の濃度を表示するために必要なセンサーです。

長時間の連続使用や、長い期間センサーの校正がとれていないと鳴る事があります。

当院では準備の段階で必ずセンサーの校正をとるので頻度はあまり多くはありませんが、使用中にこれらのアラームが鳴った時は、センサーの校正をとり直す必要があります。
 
 
 
・NOまたはO2での上限/下限アラーム

上限/下限もよく聞くアラームです。

「経過に合わせてNO濃度の設定を変えたけど、上限/下限アラームの設定を変えるのを忘れていた。」

なんてシチュエーションでよく見かけます。

明らかな異常値でない限り、アラームの設定を組み直せばOKです。

ただし明らかな異常値が出ている場合はセンサーの校正を取り直します。
 
 
 

重要度の高いアラーム

重症度の高いアラームとは、
・投与中止アラーム
・投与失敗アラーム
・インジェクターモジュール不良アラーム

の3つです。

アイノフローでは、異常が検出されこれらのアラームが鳴った時、NOの投与は緊急停止する仕様になっています。

アラームの種類を確認し、急いで対応する必要があります。

このアラームについては以下に、それぞれ説明します。
 
 
 
・投与中止アラーム

これはサンプルとしてモニタリングしているNO濃度が100ppmを12秒以上超えたことが検出された時、またはボンベと本体との通信が1時間以上途絶えた時に鳴ります。

対処法はどちらのアラームで鳴っているのかを確認しそれぞれにあった対応を取りますが、特に前者の場合は装置を丸ごと取り替えてしまうのがより早く対応できると思います。
 
 
 
・投与失敗アラーム

これは計算投与量の2倍の流量が検出されるなど投与量が多すぎる時や、内部の投与系の異常を検知した場合に鳴ります。

これも対処法としては装置を丸ごと取り替えてしまうか、アイノフロー本体を再起動させ、投与システムを一旦リセットさせます。
 
 
 
・インジェクターモジュール不良アラーム

インジェクターモジュールの電気信号がアイノフロー本体に伝わっていない時や、インジェクターモジュール自体か接続ケーブル(IMケーブル)に異常が生じている時に鳴ります。
(インジェクターモジュールとは、人工呼吸器回路に組み込むパーツで、吸気フローを検知する部分です。)

対処法はインジェクターモジュールかIMケーブルを交換します。
 
 
⚠️上記3つの重要度の高いアラームが発生した時は、機械が危険と判断しNOの投与は停止しているので、交換やリセットをこなう時は、必ず本体のバックアップモードもしくはバギングを行い、その間に対処します。
 
 


4 件のコメント

  • くま より:

    はじめまして
    酸素濃度のモニターの必要性がいまいちよくわかりません。

    NOを流すことで酸素濃度が低下するのでしょうか?

    • 岡井さん より:

      その通りです!NOは人工呼吸器からの送気に混合されるので、吸気の酸素濃度が低下する可能性があります。
      その為、しっかりモニターしておく必要があります。

      • くま より:

        ありがとうございます。
        ただその機序がよくわかりません。
        NOにより酸素の割合が減るってことでしょうか?
        NO濃度が高ければ高いほど酸素濃度が下がるということでしょう?

        酸素濃度が下がりすぎたらNOを下げるでよいですか?

        • 岡井さん より:

          ・NOにより酸素の割合が減るってことでしょうか?NO濃度が高ければ高いほど酸素濃度が下がるということでしょう?

          →人工呼吸器からの送気ガスにNOが混合する事により、酸素の割合が減ります。おっしゃる通り濃度にも依存するでしょうが、それよりも流量に強く依存すると考えています。

          ・酸素濃度が下がりすぎたらNOを下げるでよいですか?

          →基本的にはレンジ較正を行なった上で稼働させ、濃度調整は実測値からフィードバック制御されています。患者の状態を観察し緊急性が無いようでしたら、まずは回路の接続の確認やO2センサー較正を行なってみるのが良いと思います。不用意にNOを下げる方が危険です。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください