【写真付き】テンポラリー(体外式)ペースメーカーの使い方と注意点

体外式ペースメーカー,注意点

 
テンポラリー(体外式)ペースメーカーは、徐脈性不整脈の患者さんに導入することで設定した心拍数を担保してくれます。

自己心拍数が回復してくる、または恒久的ペースメーカーを導入するまでの橋渡しになる医療機器ですが、その使用について注意点があるので注意喚起です。

テンポラリーペースメーカーの使い方

テンポラリーペースメーカーは患者さんの体内に留置したテンポラリーリードと接続し、心臓に電気を流すことでペーシングを行います。

機種によって細かい設定は異なりますが、基本的には

①モード
②ペーシングレート
③ペーシング出力
④センシング感度

を設定します。

どの施設でも心室のみにリードを留置してVVIモードで使用する場合がほとんどだと思います。
 
 

テンポラリーペースメーカー使用中の注意点

先日Twitterでこの様なツイートをしました。

当院ではメドトロニック社製のテンポラリーペースメーカーを使用しています。

この製品はツイートにもある様に、画面ロックされた状態でも【EMERGENCY】ボタンを押してしまうと、即座に固定ペーシングモードに切り替わってしまいます。

緊急ボタンなので、出力もMAXになります。
 
 
 
例えば、VVIモード、ペーシングレート50ppm、出力5mA、センシング感度2mVで稼動中だったとします。

この設定でEMERGENCYボタンを押してしまうと、

モードはVOOへ、ペーシングレートはそのまま、出力は25mA(MAX)へ、センシング感度は0(自己脈は感知しない)へ切り替わります。

何度も言いますが、これは画面ロックされた状態でも切り替わります。
 
 

EMERGENCYボタンの使い所

EMERGENCYボタンは文字通り緊急時に使うボタンです。

例えば、自己心拍が完全に消失してしまっている患者さんに導入されたペースメーカーリードが、不意に抜けてしまったり、リード先端がズレてしまうと心停止してしまいます。
 
 
とっさに出力を上げて、かつ抜けたリードを緊急的に押し戻せばペーシングは復帰する可能性がありますが、画面ロックを解除して、出力を上げ、センシング感度を調整して…など、手間取ってしまいます。
 
 
EMERGENCYボタンを押した場合、ペーシングレートはそのままですが即座に出力がMAXになります。

さらにセンシング感度が0となりモードが固定ペーシングモードに切り替わることでオーバーセンシングを防ぎます。

つまり全力で心臓を動かそうとする設定になります。
 
 
 
ツイートした様な事例を防ぐ対策としては、

①カバーをつける
②不必要時にEmergencyボタンは押さない
③テプラー等で注意書きしておく

など考えられますが、何よりも一番大切なことは、「知っておく」事だと思います。

この記事を真剣に読んでくれているあなたはもう知っているので大丈夫ですね!😊
 
 
ちなみに万が一、意図せずモードが固定ペーシングに切り替わってしまった場合は、ONボタンを一度押すと元の設定に戻ります。

※EMERGENCYボタンにより、VOOで動作中.
※画面には【ASYNCHRONOUS PACING】、「戻るためにはONボタンを押して下さい」と表示されています.
 
 
 
体外式ペースメーカー※ONボタンを一度押すと画面の表示は消えたが、モードはVVIに戻る.
※ただしペーシング出力はMAX(25mAのまま)

意図せず固定ペーシングモードになるとなぜ危険なのか?

 
自己心拍が全くなく、ペースメーカーに依存している場合であれば特に問題はありません。

問題があるのは、自己心拍は微かにあるものの、
「何かのタイミングで徐脈になるのでバックアップの為にVVI(またはDDD)モードで使用している」場合です。
 
 
VVIモードでペーシングはほとんどせず、すべてセンシング(見てるだけ)している状態を想像してみて下さい。

自己心拍があると言うことは心電図にはQRS波、T波があります。

固定ペーシングVOOモードになると、自己心拍があってもなくても必ずペーシングが送出されます。

自己心拍のT波のタイミングでペーシングが入ってしまうとどうでしょう?

R on T(ペーシングの場合はSpike on Tと言います)となってしまい、VFを誘発してしまう恐れがありますね。

R on T,ペースメーカー,固定
これが、固定ペーシングモードの怖いところです。

注意して事故なく使用しましょう。
 
 
続いてはテンポラリーペースメーカーや、恒久的ペースメーカーで起こるトラブル、「アンダーセンシングとオーバーセンシング」について解説したいと思います。

 
 

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