1992年に新生児遷延性肺高血圧症にNO(一酸化窒素)が投与され、
以降新生児医療においてNO吸入療法が迅速に拡大し、注目されています。
なぜ新生児肺高血圧治療においてNO吸入療法が有用なのか、
根拠をわかりやすく解説したいと思います。
NO吸入療法のメカニズム
新生児では胎児循環の特徴である卵円孔開存や動脈管開存により容易に右左短絡が生じ、チアノーゼを起こします。
このチアノーゼを改善するためには肺血管抵抗を下げる必要がありますが、
経静脈的に投与される血管拡張剤は肺血管・体血管の両方を拡張してしまいます。
体血管抵抗も下がるということは血圧も下がるという事なので、困ってしまいます。
そこで気体であるNOは経気道的に投与することが可能で、
吸入されたNOは肺胞から肺血管平滑筋に拡散し、cyclic GMPを上昇させることで肺血管を拡張させます。
肺から血中に拡散したNOは素早く不活性化されるので、体循環に影響をおよぼすことはほとんどありません。
つまり肺血管抵抗だけを選択的に下げてくれるのです。
NO吸入療法の注意点
NOは酸素を結合するとNO2という物質になります。
これは車の排気ガスを同じものです。
NO吸入療法を考慮している患者というのは基本的に肺血管抵抗が高くて困っている患者です。
少しでも肺血管抵抗を下げるために人工呼吸器の酸素を高濃度に設定しています(酸素濃度と肺血管抵抗には密接な関係があります)。
そんな高濃度酸素投与下にNOを追加させるという事は、NO2も発生しやすい環境になっているといえます。
このことに注意してNO吸入療法を行う場合にはNO濃度と同時にNO2濃度も測定しましょう。
NO療法におけるNO2の許容濃度は3〜5ppmとされています。
またNOは血中でヘモグロビンと結合し、ニトロシルヘモグロビンに変化することで不活性化しますが、
このニトロシルヘモグロビンはさらに血中の酸素と結合することで、
メトヘモグロビンという物質に変化します。
このメトヘモグロビンには酸素運搬能はないので、注意が必要です。
メトヘモグロビン濃度は血液ガス測定装置で計測可能なので、是非チェックしてみて下さい。
正常値は1〜2%、10%以下では症状なし、20〜30%では呼吸困難が出ると言われています。
NO吸入療法はきちんと管理した上で施行すれば、その安全性・有用性は大きく認められています。
20ppm程度のNO吸入により、全身の血圧に影響を及ばすことなく肺動脈圧・肺血管抵抗を選択的に低下出来たとと報告されています。
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