いびきによって血管内にエアが混入?舌根沈下と胸腔内圧について考察

舌根沈下時の胸腔内圧

 
いびきは舌根沈下によって気道が狭くなり音が鳴る現象です。

いびきをかいている時の胸腔内圧は過度の陰圧となり、

場合によっては血管内にエアを引き込む事があります。

今回は自然呼吸(陰圧換気)といびき、それから胸腔内圧と静脈還流を

キーワードに考えていきます。

いびきとは

「いびき」とはいわゆる舌根沈下によって気道が狭くなり、

空気の通り道が狭くなることで音が鳴る現象です。

舌根沈下の具合がひどいと気道が閉塞してしまい、睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。

胸腔内圧と静脈還流

私達が無意識に行っている自然呼吸は、

横隔膜と外肋間筋を収縮させ、胸腔内圧を陰圧にすることでスタートします。

胸腔内が大気圧よりも低気圧になるので、口や鼻の近くにある空気が

勝手に肺の中まで入ってきます。これが陰圧換気です。

逆に、挿管され人工呼吸器で陽圧換気されている患者さんでは、吸気時に胸腔内が高気圧となります。

そのせいで静脈が胸腔内の陽圧に押され、血液の還流が悪くなるのは有名な話です。

これを陽圧換気による静脈還流の低下と呼びます。

いびきによってエアを引き込む?

 
上記のことをふまえて、いびきをかいた時、胸腔内はどうなっているのか想像してみて下さい。

吸気をスタートしようと横隔膜、外肋間筋を収縮させますが、

気道の入り口が舌根沈下の為に塞がれているため、空気は入ってきにくい状況です。

しかし人は換気ができないからもっと強く吸い込もうと、横隔膜をさらに収縮させ、

胸腔内はもっと陰圧になります。

どのくらいの陰圧かと言うと最大-60〜-40cmH2Oと言われています。
 
 

自然呼吸(陰圧換気)だと、ある程度の胸腔内の陰圧で静脈が引き伸ばされ、

静脈還流が増加するのに対し、過剰な陰圧がかかると静脈内にもその影響が強く出てきます。
 
 
この状態でシース(薬やカテを血管内に入れる為の出入り口)が頸静脈に挿入され、

大気と繋がっているとしたらどうでしょう?

シースは普段は三方活栓を閉めていれば問題ありませんが、

何かのタイミングで三方活栓が開いたり、シースのカテ挿入口が開いていたりすると、

胸腔内圧の過剰陰圧に強く影響された静脈内へエア(大気)を引き込む危険があります。
 
 
このシースを通して静脈内にエアを引き込むと、肺動脈が空気塞栓となり、

呼吸困難、SpO2の低下、さらに心房中隔欠損などある場合だと脳梗塞の危険もあります。

頸静脈にシースが挿入されている患者さんがいびきをかき出したら、よく注意して見てみて下さい。


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