【危険】病院が停電したらどうなる?その原因と対策とは

病院,停電

 
病院では多くの医療機器が使われています。

中には重症な患者さんの生命を維持するのに必要不可欠な生命維持管理装置という重要な機械もあります。

そんな時、病院が停電したらどうなってしまうのでしょうか?

手術中に停電が起こってしまった場合、患者さんの命を守る事は出来るのでしょうか?

ここでは病院で起こる停電の原因と、その対策について解説しています。

停電とは

停電とは、様々な原因により意図せず電力の供給がストップしてしまった状態の事を言います。

一般家庭でもよく発生し、その原因は大きく分けて2つあります。

落雷によるもの

落雷は山や森の樹木によく落ちるイメージですが、電線や電柱にも落ちます。

落雷によって発電所から建物へ電気を送っている電線の途中が損傷してしまうと、その先にある建物への電気の供給がストップしてしまうので停電が発生します。

また電線は地中にも通っていて、雷が地面に落ちた時に地下の電線に影響を与える事でも停電が起きる可能性はあります。

ブレーカーによるもの

これが皆さん1番経験あるのではないでしょうか。

部屋の照明にテレビ、ストーブなど多くの家電を付けたまま、さらにドライヤーも使った瞬間にブレーカーが落ちて、一斉に停電するアレです。

ブレーカーとは日本語で言うと過電流遮断装置と言います。

これは要するに電気の使いすぎが原因です。

一度に電気を使いすぎるとブレーカーが落ちてしまい、停電となります。
 
 

病院で停電が起きるということ

病院ではたくさんの機械が24時間稼動しています。

中には患者さんの生命をギリギリの所で繋いでいる生命維持管理装置と呼ばれる重要な機械もあります。

また、手術中でも大小様々な機械を使います。
 
 
もしこれらの機械を使用している最中に、病院が停電になったとしたらどうなると思いますか?

停電により患者さんに繋がっている人工呼吸器が、人工心肺装置が、麻酔器が、突然OFFになってしまったらどれだけ恐ろしいことでしょう。

大丈夫です、病院では様々な方法で停電に対する対策がとられているので今言った様な恐ろしいことが起こる可能性は限りなく低いです。

ただしそれは対策が正しく機能している場合の話です。

対策があってもコンセントの差し間違いやムチャな繋ぎ方をしていると、その対策は正しく機能せずトラブルが起きてしまう可能性はあります。

病院で停電が起きる原因と対策を知り、最後は人の目でしっかり確認しましょう。
 
 

病院で停電が起こる原因

落雷や災害で電線が損傷し、電気の供給がストップする

先程に説明した事と同じことが病院でも起こり得ます。

「近くで雷が落ちて電線が損傷して停電する。」

「台風で樹木が倒れ、その時電線も巻き込んでしまい停電する。」

「交通事故で車が電柱に突っ込んだ拍子に電柱が倒れて停電する。」

電気が供給されてくる為の電線は地中に埋まっているものもあると説明しましたが、

「近くで工事が行われていてショベルカーが地面を掘った拍子に地中の電線を引きちぎってしまい停電する」

というのも考えられない事もなく、例を挙げだしたらキリがありません。
 
 

病院でもブレーカーが落ちて停電する

災害時はともかくとして、ブレーカーに関しては「病院は大きい建物だから」とか、「そもそも病院だし」と油断していませんか?

病院であっても電気を使いすぎた場合、ブレーカーが落ちて停電します。

例えばテーブルタップをいくつも繋ぎ合わせ大量のコンセントを差しまくり、元となる電源に負担を掛けすぎている場面に遭遇することがあります。

この元となる電源に設定されている許容電流以上の電気を要求した場合、ブレーカー(過電流遮断装置)が作動して、この電源に差さっている全ての機械への電気の供給がストップします。

病院,停電
<テーブルタップにテーブルタップが繋がれ、そこへさらに別の機械のコンセントが繋がれている。元となる電源への負担が大きく、危険。>
 
 

機械が漏電(ろう電)し、地絡事故が発生して停電する

漏電とは故障や水没した機械などに起きる、その名の通り電気が機械の外に漏れ出ている状態の事を言います。

機械に漏電が起こった際、そのまま使用すると機械の外装に漏れ出た電気に感電(地絡事故)してしまう恐れがあるので危険です。

地絡は人体だけでなく設備の広範囲に影響を与えるので、最悪の場合ヒューズが飛んで停電となり周囲の機械全てに電気が送られなくなります
 
 
ちなみに漏電している機械を触ってしまったからと言って直ぐに感電するというワケではありません。

アースピンが差さっていれば大丈夫なことがほとんどです。

アースピンとは医療用の3Pコンセントについている謎の棒です。

病院,停電

この謎の棒は漏れた電流を機械を触ってしまった人間の方ではなく電源(壁)の方向へ優先的に流す為の棒です。

さらに機械に混入したノイズなどを除去してくれる役割もあります。

たまにこのアースピンが無理やり外され、電源に接続されているコンセントを見かけますが、医療現場では特に危険なので絶対にやめて下さい。
 
 

病院の停電対策

非常電源

これは落雷や災害などで電線が損傷し、電気の供給が止まった時の停電対策となります。

病院の電源には主に3つの種類があり、白い電源が一般商用交流電源、赤い電源が非常電源、緑色の電源が無停電非常電源です。

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一般商用交流電源は一般家庭にある電源と同じものなので、停電した場合電気の供給はストップしてしまいます。

赤色の非常電源は雷などで電気の供給がストップしても電気の供給元を病院の自家発電に切り替えるので、停電したとしても直ぐに復旧します。

直ぐにと言っても赤色は最大で40秒は停電するので、生命維持管理装置を任せておくには安心できません。

緑色の無停電非常電源は、電源の奥では常にフル充電され続けているバッテリーから電気が送られている様な仕組みなので、仮に電線の損傷で電気の供給がストップしても停電することはありません

<↑イメージとしてはこれに近い?>
<【同時充放電可能】バッテリー本体が充電中でもスマホ端末などに給電することが出来る。>

 
 
これなら生命維持管理装置をも任せることができます。

ただし実際の停電時の無停電非常電源の連続使用可能時間は最短で約10分程度なのを知っておいて下さい。
 
 

ブレーカーに対する電流監視装置による警報

そもそもなぜブレーカーなんてものがあるのでしょうか?

こっちはキチンと電気代を払っているんだから、少々の電気の使いすぎなんて大目にみて欲しいと思いませんか?

違うんです。

なにもイジワルの為に電気の使用量を制限しているワケではなく、電気の使い過ぎは単純に危険なのです。

なぜ危険なのかというと、電線には電気を流せる最大量(許容電流)が決まっていて、許容電流以上の電気が継続して流れると、電線が発熱し最終的に発火する恐れがあるからです。

過電流による発火を防止するため、ブレーカー(過電流遮断装置)を作動させて電力の供給をストップさせます。
 
 
ただし医療現場ではこのブレーカーの作動によって機器がストップしてしまうと非常に危険なので、許容電流に近づいた時点で電流監視装置が一度警報を出して教えてくれます。

病院,停電

さらにスタッフが行える対策としては、テーブルタップやタコ足でコンセントを差しまくらない事です。

どうしてもの場合は、機器によって稼動に必要な電気の量は違うので近くにいる臨床工学技士に相談して下さい。
 
 

非接地配線方式

【病院で停電が起こる原因】の3つ目で説明した通り、機械の漏電により地絡事故が発生すると、ヒューズが飛んで設備全体が停電し、周りの機械全てが停止してしまう恐れがあります。

こうならない為に病院では非設置配線方式(フローティング電源)という仕組みを採用しています。

これは設備側に絶縁変圧器を設け、2次側を設置しない事(フローティング)で漏電による地絡時にも電気の供給を確保するという仕組みです。
 
 
また病院では機械の故障による漏電が起きていないかを監視するアイソレーションモニター(絶縁監視装置)も備え付けられています。

病院,停電

アイソレーションモニターから警報が鳴るという事はその近くに漏電している機械があるという事を示唆しています。

機械のコンセントを1つずつ順番に抜いてみて、警報が止んだならその機械は漏電していることがわかります。

非接地配線方式をとっていれば停電する事はありませんが、その機械が故障していることには変わりないので、使用は控える様にして下さい。
 
 

最後に

 
病院で起こる停電の原因と対策について解説しました。

スタッフ側からしたら停電なんてめったに起こることではなく、日頃から意識しているという人は少ないと思います。

しかし停電やトラブルはなんの前ぶれもなく突然やってきます。

いざ起こってしまった時にも冷静に行動できる様に、この病院の仕組みをたまにでいいので思い出して欲しいと思います。

また、もしもの時に備えてバッテリーが積んでいる機械、バッテリーの積んでいない機械を日頃から認識しておくと良いでしょう。

それが間接的にも患者さんの命を救うことに繋がります。
 
 


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