新型コロナウイルスが流行りだした頃はニュースでも頻繁に「ECMO」という治療法を耳にしましたが、最近ではあまり聞かなくなりました。
しかし、新型コロナウイルスの収束の目処は未だ立っていません。
皆さん忘れた頃かも知れませんが、今回は改めて「ECMO」という治療について、非医療従事者の方にも分かるように解説したいと思います。
目次
ECMOとは
ECMOとは、ポンプと人工肺と言われるものを使って、炎症や傷害によって機能を失った肺の代わりに、体の中に酸素を取り込ませる治療です。
人工呼吸器の設定を最大レベルにしても、回復の兆しが見えない場合などに導入が検討されます。
まずは体の仕組みから解説
人は息を吸う事で、空気中の酸素を体の中に取り入れます。
息を吸う事で肺に入った酸素は、肺の中の毛細血管から血液に溶け込み、心臓の拍動によって全身の臓器へと送り届けられます。
この酸素が体の中で不足すると各臓器がうまく働かなくなり、最終的に死亡してしまいます。
重症肺炎になるとどうなるか?
肺炎とはその名の通り「肺が炎症を起こしている」状態であり、いくら息を吸っても、肺に空気を溜めても、酸素を血液に取り込む事ができなくなってしまいます。(できにくくなってしまいます)
「呼吸が苦しい」のは、「呼吸そのものが出来にくく苦しい」という事がありますが、「体が酸素不足に陥っていて苦しい」という事も想定できます。
まずは酸素投与を行う
私達が普段吸っている空気中には、実は酸素は20%程しかありません。
ほとんどは窒素と言う気体が占めています。
健康な肺なら20%程度の酸素でも十分生きていけるのですが、肺炎になると普段より酸素を取り入れられないので、20%では足りません。
なんとか体の中に酸素を取り入れさせる為に、マスク等を使って20%よりも濃い酸素を吸わせる事で、体の酸素量をキープさせるのです。
次に人工呼吸器を使う
それでもまだ酸素が足りない場合は、のどにチューブを挿し込んで人工呼吸器に繋げます。
人工呼吸器によって肺に「圧」をかけることで酸素の取り込みをさらに強化すします。
酸素の濃度も100%までコントロール可能です。これは普段の5倍の濃度となります!
治療の最終段階としてECMOを導入する
それでもまだ酸素が足りない場合に、ECMOを導入します。
ECMOは血管にチューブを挿し込み、血液を引っ張り出して、その血液に直接酸素を溶かし込ませます。
そして酸素をたくさん含んだ血液を別の血管から体の中に戻します。
これを24時間ずーっと行うのがECMOという治療の仕組みです。
つまり自分の肺を一切使わなくても、常に酸素を取り入れる事ができるのです。
この肺の動きを止めているスキに、体内のウイルスをやっつけ、炎症を治す事ができれば回復が見込めます。
現在の医療でこれに勝る肺への治療はないので、【最後の砦】や【治療の最終兵器】と呼ばれています。
しかしECMOにもリスクがある
ECMOを導入すればすべて解決とい訳ではありません。
むしろここからが本当の闘いと言えます。
ECMOのリスク① 出血と抗凝固
血液は体の外に出ると固まる性質があります。
ECMOは一度、血液を体の外に出すので、血が固まりにくくなる薬を投与し続けなければなりません。
逆に言うと、その薬のせいで、出血が止まらなくなる可能性も考えられます。
出血もなく、血も全く固まらないのが理想ですが、出血と抗凝固のコントロールは非常に難しいのです。
ECMOのリスク② 感染
1cm以上もあるチューブを皮膚の上から血管の中にまで挿し込んでいるので、その傷口から細菌が入り込んで感染を起こしてしまう恐れがあります。
もうすでに、例えば新型コロナに感染しているからと言って、別のウイルスや菌に感染しないという保証はどこにもありません。
むしろ免疫が低下しているため、別の細菌感染を起こすリスクは高いです。
感染を起こすと炎症は治りにくく、ECMOが治療の期間も長くなります。
この他にもリスクや合併症はたくさんありますが、この2つが代表的なものになります。
ECMOの限界
ECMOと言う治療はあくまで、重度の炎症によってダメになった肺が治るまで、「肺の代わりに酸素を取り込む」ものです。
ECMO事態が肺を「治す」ワケではありません。肺を治すのはあくまで患者の「治癒力」なのです。
普段からタバコをメチャクチャ吸っていたり、もともと肺炎を繰り返している様な肺はECMOをしてもなかなか良くならない傾向にあります。
※私は国家資格を有する臨床工学技士であり、ECMO治療に携わることはありますが医師ではありません。個人的な治療に関する質問や相談にはお答えできませんのでご了承下さい。
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