ECMO管理中は循環動態が不安定なため、CHDFを併用することをしばしば経験します。
ECMO管理中にCHDFを併用する事は、電解質の是正や水分管理において大きな効果を発揮します。
ここではECMOとCHDFを併用することの効果や注意点、方法をまとめてみました。
目次
ECMOとは
ECMOとはExtracorporeal Membrane Oxygenationの頭文字を繋げたもので、日本語で言うと膜型人工肺による酸素化療法と言います。
日本ではECMOは呼吸補助としてのイメージがありますが、送脱血管の挿入部位によってはPCPSとやっていることはほとんど変わりありません。
ちなみにPCPSはPercutaneous Cardio Pulmonary Supportの頭文字を繋げたもので、日本語で言うと経皮的心肺補助療法と言います。
CHDFとは
CHDFは持続的血液透析ろ過療法です。
Continuous Hemodiafiltrationと書きます。
HDF(Hemodiafiltration)は腎不全患者に対し導入し、尿毒症物質の除去、機械的除水を行います。
これに対しCHDFは、HDFをContinuous(持続的)に行うため長時間に渡り施行でき、さらに持続的であるが故に血液浄化効率を緩徐に行うため、バイタルの変動が少ないとされています。
ECMOとCHDFと併用する事の効果
ECMOを導入すると、カテコラミンを始め輸血など多くの薬・水分が投与されます。
うまく尿が出てくれたら良いのですが、利尿薬の反応が悪かったり、様々な理由から水分のプラスバランスになってしまう事が多いです。
この時CHDFを併用する事で自尿が出ずとも機械的に除水することができ、また腎不全の予防にも効果的です。
続いて、特にVV-ECMOの場合では、呼吸不全からの高CO2血症によりアシドーシスの状態である場合が多いです。
VV-ECMOを導入したら、まずはアシドーシスを是正する事が第一の目標と言えます。
アシドーシスの是正目的にCHDFをECMOと併用しているケースは実はよくあります。
ECMOとCHDF併用の方法
ECMOとCHDFを併用する場合は大きく分けて2つのパターンがあります。
それは、
①ECMOとは別に新たなブラッドアクセスを確保し、そこからCHDF脱血/返血を行うパターン
②ECMOの回路からCHDFの脱血/返血を行うパターンです。
前者の場合はECMOとCHDFの装置が独立しているので、システムとして後者に比べてシンプルで管理しやすいという利点があります。
しかし新たにブラッドアクセスをとるので、出血源、感染源が増えるという欠点もあります。
後者の場合はECMO回路から枝分かれしているルートからCHDFの脱血/返血を行うので、CHDFの為に新たなブラッドアクセスをとる必要がありません。
しかしシステムが複雑になる事、CHDFの開始/回収時に気泡の混入を招きやすい、ECMO回路に脱血不良が生じた場合の陰圧がCHDF回路に影響を与える、といったデメリットが挙げられます。
個人的調査によると、多くの施設でECMO回路からCHDFの脱血/返血を行っている様です。
次にECMO回路にCHDFを接続するパターンをいくつか紹介します。
ECMO回路からとるパターン①
ECMO回路の送血側からCHDFの脱血を行い、ECMO回路の脱血側へCHDF返血を行っています。
このパターンでは、CHDFの脱血がECMOの送血側(つまり陽圧部分)から行われていることで、安定してCHDFの脱血が行えます。
しかしECMO回路の脱血側へCHDF返血を行う事に関しては注意しなくてはなりません。
ECMOが脱血不良を起こした時、ECMO脱血側回路には一時的に強い陰圧がかかります。
この陰圧がCHDFの返血側に伝わると、CHDFは返血圧異常アラームで停止してしまいます。
また返血回路〜ダイアライザーまでも陰圧が伝わると、ダイアライザー内で逆濾過が発生する可能性があります。
ECMO回路からとるパターン②
ECMO回路の送血側からCHDFの脱血を行い、遠心ポンプの出口側にCHDFの返血を行っています。
このパターンでは、パターン①と同様に安定してCHDFの脱血が行えます。
また、CHDFの返血を遠心ポンプの出口側(つまり陽圧部分)に行う事で、先程の様にECMOの脱血不良時にダイアライザーでの逆濾過の発生を抑えます。
さらに万が一、CHDF返血側に気泡が混入しても、その返血が遠心ポンプの出口側(つまり人工肺の手前)なら、気泡が人工肺で補足されることに期待するバックアップ体制がとれます。
問題としては、遠心ポンプと人工肺の間にルートが無いタイプのECMO回路では、そもそもこの方法は出来ない事が挙げられます。
ECMO回路からとるパターン③
ECMO回路の送血側からCHDFの脱血し、同じくECMO回路の送血側へCHDF返血を行っています。
このパターンは先程までと同様に、CHDFの脱血は安定してとれますが、万が一CHDF返血側に気泡が混入した場合、人工肺で補足されると言う期待を持つことは出来ません。
(そもそも人工肺で気泡が補足されると言う確証はありません)
しかしこのパターンはECMO送血回路に2つ以上のルートが必要となるので、難しい場合が多いです。
ECMOとCHDF併用時の注意点
ECMOとCHDFを併用すると得られる治療効果は大きいですが、注意しなければならない事もたくさんあります。
先に述べた、
・出血源の増加
・感染源の増加
・システムの複雑化
・気泡の混入
などの他に、
・CHDFの再灌流
といった点にも注意しなければなりません。
先程のECMO回路からとるパターン①と②では、ECMO回路の下流でCHDFを脱血し、ECMO回路の上流でCHDF返血を行っていました。
つまりCHDFによって浄化された血液を再びCHDF脱血するという再灌流が起こります。
機械的除水を主目的に行っているなら特に問題となりませんが、主目的が電解質の是正であるなら、この事を知っておかなければなりません。
今回様々なパターンを紹介しましたが、メリット・デメリットは表裏一体です。
それぞれの特徴を活かし、施設のやり方に合った方法で安全に管理できる事がイチバンだと思います。
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