最近、ECMOとPCPSの違いはなんですかとよく聞かれます。
施設によって様々な呼び方があると思います。
医療現場では同じ治療や機器なのに呼び方が人によって違うといった事がよくあり、混乱させられます。
今回は単純な意味でのECMOとPCPSの違いについて解説します。
目次
ECMOとPCPSの意味
ここでハッキリさせましょう。
ECMOとPSCPS、その違いの答えは「やってるコトは同じ。言葉の表現が違うだけ」です!
ECMOとは、「体外式の、膜型人工肺による、酸素化」という意味となるExtraCorporeal(体外式の)Membran(膜型人工肺)Oxgenation(酸素化)の頭文字をとったもの。
対してPCPSとは、「経皮的な、心肺の、補助」という意味になるPercutaneous(経皮的)Cardio(心臓)Pulmonary(肺)Support(補助)の頭文字をとったものになります。
どっちの表現でも心臓と肺の機能を補助する治療ということは変わりませんが、どちらかと言うとECMOは「人工肺を使って心肺を補助していますよ」という部分を強調し、PCPSは「経皮的に心肺を補助していますよ」という部分を強調しています。
ECMOとPCPS 海外での考え方
もともと海外では昔からPCPSという呼び方はせず、ECMOで統一されています。
そこからさらにVA-ECMO(ブイエーエクモ),VV-ECMO(ブイブイエクモ),central ECMO(セントラルエクモ)といった呼び方で区別しています。
日本では逆にPCPSという呼び方が主流でしたが、最近では海外の医療に遅れをとらないようにと、ECMOという呼び方に統一してきている施設が多いようです。
ちなみにPCPSという表現を使っているのは日本と韓国だけらしいですよ。
※この記事の内容の解説はYouTube動画でも詳しく解説しています。
ECMOの種類
ECMOは脱血管と送血管の留置部位(どこから脱血し、どこへ向かって送血するのか)によって、いくつかの種類に分けられます。
VA-ECMO
VA-ECMOのVはVenous(静脈)、AはArtery(動脈)を意味します。
血液は、「V(静脈)から脱血してA(動脈)へ返血する」という方法を用いて行うECMOが、VA-ECMOです。
これこそ言葉は違えどPCPSと同じ方法となり、その目的は主に心臓のサポートです。
VV-ECMO
VV-ECMOは「V(静脈)から脱血してV(静脈)へ返血する」という方法を用いて行うECMOが、VV-ECMOです。
これは見た目はPCPSとは似ていますが目的が違うので、VV-ECMOのことをPCPSと呼ぶのは間違いです。
VV-ECMOの目的は、主に肺・呼吸のサポートです。
central ECMO
central ECMOは小児に対して施行されることが多い方法です。
開胸して右心房に挿入したカニューレから静脈血を脱血し、人工肺で酸素化した動脈血を上行大動脈に挿入したカニューレへ送血します。
この静脈血を脱血し、動脈へ送血するという点ではVA-ECMO・PCPSと同じ方法とも言えます。
なぜ小児に対して施行される事が多いのかと言うと、小児はECMOのカニューレを挿入するための大腿動静脈が未発達で細く、十分な太さのカニューレを挿入する事が困難だからです。
カニューレの太さが充分でないと、目標とする血液流量が出せません。
そのため感染のリスクは上がりますが、開胸下に直接右心房と上行大動脈へカニュレーションを行うのです。
オススメの教科書
ECMOとPCPSの違いの詳しい説明はもちろん、ECMOの原理、管理法、生理についても詳しく書いてあります。
一見ムズかしそうなタイトルですが、写真やイラスがかなり多く載っていて非常に分かりやすいですよ!
ECMO症例を経験する機会がある方にとってのバイブルとなり得る一冊です。
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