【看護】Impella(インペラ)の特徴と管理・看護のポイント

Impella

 
Impella(インペラ)はIABPやECMO(PCPS)、VADなどに次ぐ補助循環装置で日本でも導入が開始されました。

日本においては心原性ショックや内科的治療抵抗性の急性左心不全を主体とする循環不全が遷延する場合などに使用が限定させるため、まだまだ症例数・経験数が少ないと思います。

そこで今回はImpellaの概要や特徴、管理・看護のポイントについて解説したいと思います。

Impella(インペラ)とは

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Impellaは心原性ショックや薬物治療抵抗性の急性左心不全に対して、経皮的に導入する事のできる補助循環装置です。(Impella 5.0は外科的に導入されます。)

カテーテル式軸流ポンプを大腿動脈から左心室に挿入・留置し、左心室内から血液を直接脱血、上行大動脈に送血することにより体循環を補助します。

Impellaを導入すると左室圧容量負荷が減少し、左室は仕事が楽になるので心筋酸素消費量軽減効果があります。

しかし非常に重篤なショック症例、自己心拍再開が得られない心停止、低酸素血症ならびに右心不全を合併している場合にはV-A ECMO(PCPS)での補助を優先することが望ましく、あるいは組み合わせて使用する事もあります。
 

 

Impellaの長所と短所

長所

・経皮的に導入する事ができる。(Impella 5.0は外科的に導入されます)
・左室圧容量負荷の軽減。
・IABPに比べて循環補助率は高い。
・ECMO(PCPS)に比べてFlowを上げても左室圧負荷の増大にならない。

短所

・右心系の補助は出来ない。
・ECMO(PCPS)の様に人工肺がないので、呼吸補助は出来ない。
・位置がズレやすく、脱血不良を起こしやすい。
・高価(Impellaカテーテルは1セット約250万します。)
 
 

Impellaの管理のポイント

Impellaのサイズを確認

現在日本で使用できるImpellaは、【Impella2.5】、【Impella CP】、【Impella 5.0】の3種類です。

数字の部分は送血できる血流量を表していて、Impella 2.5は最大で2.5L/min、Impella 5.0は最大で5.0L/minを送血する事が出来ます。

Impella CPはなぜか数字ではありませんが、最大で3.7L/minを送血する事が出来ます。
(それならImpella 3.7でいいんジャナイ?)
 
 
どのサイズのImpellaが導入されているか知っておくことで、どこまでの循環補助が可能か把握できるので、集中治療室に戻ってきたらまずは導入されているImpellaのサイズを確認しましょう。
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補助レベル

Impellaは補助レベルをP0〜P9まで段階的に設定できます。

補助レベルを上げるほどポンプの回転数が増え、その分血流量も増加します。

例えば循環血液量が4.0L/minの人にImpellaを導入し、補助レベルを適切に設定してFlowが2.0L/minだったとしましょう。

この場合、循環補助率はざっくり50%になっています。
 
 
導入時にしっかり循環を補助したい(しなければならない)時は補助レベルを引き上げ、心機能が回復し離脱を考慮する段階になってくると補助レベルを引き下げます。

時にポンプの位置が悪く、補助レベルを上げたくても脱血不良が起きてしまう為に、やむを得ず補助レベルを下げることもあります。

位置波形

Impellaの適切な留置位置とは
「カテーテルの脱血部が左心室内にあり、送血部が上行大動脈内にある」です。

もしもカテが奥へ入りすぎ、脱血部も送血部も左心室内に入ってしまうと何の補助にもなりません。

カテが全体的に引かれ、脱血部も送血部も大動脈内に出てしまっても同じことです。

ポンプの位置は、装置のモニターに表示されている「位置波形」と「モーター波形」から考えます。

位置波形が大動脈圧波形を示していて、モーター波形が規則正しいパルス状の波形を示していればOKです。

波形では判断が難しい場合は心エコーにて位置の確認を行います。

ちなみにポンプ位置がズレてしまい、循環補助効率悪くなると血圧が低下するので、突然の血圧低下が認められた場合には焦らずポンプ位置を確認してみると良いでしょう。

<適切なポンプ位置>
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<心室内に入り込んでしまっている>
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<吸入部と吐出部がともに大動脈内 or 心室内にある>
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脱血不良と溶血

Impellaの留置位置がズレると、上記で説明した通り血液吐出としての補助が出来ないので、血圧が低下します。

この他にも脱血不良時の過度な陰圧による血球へのダメージが溶血を引き起こします。

遊離ヘモグロビン値の上昇やヘモグロビン尿が継続的に観察されたら、
 
 
①Impella留置位置の確認を行う
②許容可能な範囲で補助レベルを下げる
③他の原因を探る

を行いましょう。

パージ液とヘパリン

Impellaはモーターをカテーテルに内蔵している為、モーター内への血液の侵入を防がなければなりません。

そのため加圧されたブドウ糖液がパージ液としてモーターに供給され、圧バリアとなって血液の侵入を防ぎます。

パージ液は定期的に交換する必要があるので、残量に注意します。

ついでにこのブドウ糖液にヘパリンを添加し、抗凝固も行います。

ACTはImpella稼働中の出血傾向に依存しますが、およそ160〜180秒程度に管理するのが一般的です。
 
 

香坂 俊(編集), 林 淑朗 (編集), JSEPTIC(日本集中治療教育研究会) (編集)

10 件のコメント

  • とら より:

    分かりやすく、とても参考になりました!

  • りょう より:

    2年目看護師です。最近インペラ受け持つことになったのでとてもわかりやすくて助かりました!
    1つ質問なんですが、パージ液交換についてで、私の病院ではMEさんに交換していただくようになってます。ふと看護師側では出来ないのか?っと思ったのですが、、、
    MEさんにしか出来ないんですか?
    マニュアル的に看護師が行うことはありませんが、パージ液交換時の注意点等ありましたらご教授お願いします。

    • 岡井さん より:

      ありがとうございます(^^)
      そんな事はありませんよ。
      当院でもパージ液の交換はMEが行なってはいますが、看護師さんがされても何の問題はないと思います。(施設の方針による)

      注意点についても、ただ交換するだけなので特にないかなと思います。
      強いて言えば、組成の入力を間違えない様にする事とエアを入れない様にする事でしょうか(^^)

      • りょう より:

        返答ありがとうございます。

        なるほど、、、!

        もうひとつよろしいでしょうか?
        エアを入れないとの事ですが、当病院のパージ液はAラインの動脈圧セットのようなエア抜きをしたものでなく、エア抜きしていないもの(ブドウ糖5%のものにヘパリンを混注したもの)が投与させていますが、こちらはとくにエア抜きしたほうがいいとかあるのでしょうか?

        簡単に空気は上にいくものでインペラパージ液投与ルートに気泡感知システムもあるので要らないのでしょうか?

        何度も質問失礼致しますm(_ _)m

        • 岡井さん より:

          エアを入れないとは、パージラインに、という意味ですね。
          パージ液のバッグのエアについては、メーカーの指示はありません。
          先端が左室に入るものなので、超厳密に言えばバッグの中のエアも抜いた方がいいのかも知れませんが、仰る様にパージカセットでエア検知してくれるのでそこまでする必要はないかなと思います(^^)

  • こうゆう より:

    最近、施設でインパラを導入し始めました。
    とても勉強になりました。
    御質問なのですが、
    インペラCPで位置感知用サイドアームに加圧生食を流しますが、開口部の閉塞等を考えてたら、ヘパリン生理食塩水を流しても良いのでしょうか?
    ACTを延ばすリスクやその他のヘパリンの副作用のリスクを考慮すると、生食のみの管理が正しいのでしょうか?
    御回答していただけると幸いです。
    よろしくお願い申し上げます。

    • 岡井さん より:

      こうゆう さん、ご質問ありがとうございます。
      位置感知用サイドアームにヘパ生を流しても問題ないと思います。現にそうされている施設もあると聞いた事がありますよ。(^^)

      ヘパリンを流す事のリスクですが、インペラを導入する時は、通常、位置感知用開口部に限らずブドウ糖液にヘパリンを混注しパージ液として流す事が推奨されています。
      既にヘパリンが投与されている状態ならば、位置感知用サイドアームに流す生食をヘパ生に変えたところでリスクは殆ど変わらないと思います。

      • こうゆう より:

        岡井様

        コメント返信ありがとうございます。
        疑問に思っていたところ解決出来ました。
        ありがとうございます。

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