【まとめ】意外に見落としがちな人工呼吸による合併症

人工呼吸の合併症

 
今年の呼吸療法認定試験まで残り1ヶ月を切りましたね。勉強は進んでいるでしょうか?

別に呼吸療法試験が近づいて来たからってわけではないですが、自分の復習のために

人工呼吸の合併症を考えてみたのでシェアしたいと思います。

目次

陽圧換気による合併症

・圧外傷
圧外傷に分類される合併症は、肺間質気腫、気胸、縦隔気腫、皮下気腫などが挙げられます。

これは人工呼吸の陽圧により肺が過伸展し、肺胞膜や胸膜が破れてしまうことで起こります。

特に人工呼吸中の気胸は緊張性気胸となり、循環抑制など重篤な状態を引き起こすので注意が必要です。
 
 
・肺実質障害
40〜50cmH2O以上の高い気道内圧や大きな一回換気量では、微小血管から間質への透過性が行進し、間質性肺水腫や肺胞性肺水腫を引き起こします。

また機械的に末梢気道や肺胞上皮細胞、血管内皮細胞なども破壊され、ARDSを引き起こすこともあります。
 
 
・循環抑制
陽圧換気では静脈循環量の減少が起こり、心拍出量の低下から血圧低下を引き起こします。

気道に関する合併症

・挿管に伴うもの
気管内挿管の合併症として自己抜去と事故抜管が挙げられます。

また経鼻気管内挿管の場合では咽頭後壁の損傷に十分注意します。
 
 
・気道損傷
声門や声門下障害では浮腫が起こりやすかったりします。

浮腫の状態のまま抜管をすると、抜管後の気道閉塞を来すことがあります。

カフの空気が多すぎる場合でも気管壁の圧迫から浮腫や、ひどい場合には壊死を引き起こします。
 
 
・気道乾燥
通常では鼻腔・口腔で加湿されますが、挿管の場合だと加温加湿器をつけなくてはなりません。

加湿器のつけ忘れや不十分な加湿では気道乾燥を招きます。

気道が乾燥すると炎症を起こしたり、痰などの分泌物が固くなり、閉塞を起こしたりもします。
 
 
・気管チューブ位置異常
深すぎると片肺挿管となり、浅いと声帯へのカフの圧迫やリークをきたします。
 
 
・気管内チューブ閉塞
気道分泌物が粘稠であったり加湿が不足したりすると気管内チューブが閉塞を起こします。

スパイラルチューブでは患者が噛むと潰れてしまいます。
 
 
・気道感染
人工呼吸開始後の肺炎(VAP:Ventilator Associated Pneumonia)は8〜28%に起こるとされています。

3日以上の人工呼吸期間、複数回挿管、重症患者、慢性閉塞性肺疾患の患者でも発生率が高いと言われています。
 
原因は回路や加湿器の汚染、気管内吸引時の不潔操作、口腔・咽頭細菌の気道内流入などがあります。

口腔洗浄を行った4〜6時間後には雑菌数はすでに増加していると言われています。

なので1日4〜6回の口腔洗浄を行うことが勧められています。(多すぎ?)
 
 

気管内吸引に関する合併症

気管内吸引で起こる合併症は、感染と低酸素血症です。

誤った吸引操作で不潔に行ってしまうと気道感染を引き起こします。

また吸引中はPaO2は10〜20%低下すると言われているので吸引操作は20秒以内に行うと良いです。

ガス交換能が特に悪い患者さんでは、吸引の前に呼吸器を高い酸素濃度に設定してしばらく呼吸させ、PaO2が十分上昇した頃合いを見計らって行うと予防になります。
 
 

拘束に関する合併症

恐怖や発語不能、不眠などから不安やせん妄など、ICU症候群を発症する場合があります。

過度の鎮静などで体が動かなくなると褥瘡を引き起こしますのでできるだけ患者の自発体動を残しつつ合併症を予防しましょう。
 
 

その他

・栄養障害
経口摂取不能などの理由で患者さんは栄養障害に陥りやすいという意識を持っておいて下さい。
 
 
・消化性潰瘍
意外に見落としやすいのですが、挿管、拘束、不穏などのストレスによる潰瘍に注意です。
 
 
・胃膨満
気管内挿管は異物感から空気嚥下が起こりやすいです。

また鎮静剤や筋弛緩の使用で消化管の機能低下が起こることも忘れてはいけません。

胃の膨満は横隔膜の動きを制限し低換気になりやすいので注意です。
 
 


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