人工心肺装置のメインとなる血液ポンプにローラーポンプを選択する場合、オクルージョン(圧閉度)テストが必要です。
その方法は施設によって様々ですが、現在JIS(日本工業規格)で定められている方法を紹介します。
目次
オクルージョンとは
オクルージョン:Occlusion とは閉塞・遮閉などという意味があります。
通信や映像関係の世界で使われることが多い言葉ですが、人工心肺の世界ではローラーポンプの圧閉度の強さの事を言います。
一般的にはチューブがローラーによって完全に押しつぶされた状態よりも、わずかに逆流が発生する程度の隙間を残す状態が適正圧閉度とされます。
過度な圧閉状態で体外循環を行うと、ずり応力による物理的圧迫で赤血球の破壊を招いてしまうので、ローラーポンプで人工心肺装置の回路をプライミングする時は必ずオクルージョンを調節します。
逆に不完全な圧閉な状態でも溶血は引き起こされます。
オクルージョンテストの方法は日本工業規格[JIS T1603]に記載されています。
ちなみにローラーポンプの代わりに遠心ポンプを使用している施設もあると思いますが、遠心ポンプは回路を押しつぶすことはないので、オクルージョンの調節は不要です。
輸液セット滴下法
ポンプチューブに標準輸液セットを取り付け、1m水柱の高さに合わせる。
この時、落差圧によって輸液セットに毎分5〜10滴の滴下が認められる様にオクルージョンを調整する。
回路液面降下法
送血回路を1mの高さに掲げ、回路の液面が落差圧により毎分1cm降下するようにオクルージョンを調整する。
圧力低下速度法
送血回路を鉗子で遮断し、250mmHgの圧力を加える。
ここから10秒あたり5mmHgの圧降下を認める様にオクルージョンを調整する。
圧閉部円形模様法
チューブの圧閉部に生じる円形模様の大きさを見てオクルージョンを調整する。
オクルージョンテストの注意点
JIS T1603に記載されている内容からすれば、「毎分約0.3〜0.7mLの逆流が適正な圧閉度」とされています。
私の病院では回路液面降下法を用いてJIS T1603に従い、1mの高さ・1cmの液面降下でオクルージョンテストを行っていますが、
逆流量を調査した実験では0.28mLの逆流量でした(内径6mmの回路)。
つまりわずかにJISの規定から外れている事になります。
皆さんの病院でも日常行っているオクルージョンテストが本当に適正圧閉度になっているかどうか是非実験してみて下さい。
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