人工呼吸器のグラフィックモニターには患者さんの呼吸状態をリアルタイムで表示してくれる情報がたくさんあります。
臨床現場において情報は宝です。
今回は人工呼吸器の異常波形『初級編』ということで、リーク(漏れ)、回路内の水滴、肺コンプライアンスの低下、の3つについて解説します。
目次
リーク(漏れ)
【見分けるポイント】
・ボリューム波形に注目してみる。
・呼気相において波形が基線(0mL)まで戻っていない。
・次の吸気開始時に0mLに補正され、波形が描かれる。
【この波形が示す事態】
・回路の接続不良や不適切なカフの設定が考えられる。
・送気されたガス量に対して、呼吸器に還ってくる呼気量がリークのために減るので、基線に戻らずこの様な波形を描く。
・1回換気量の低下や従量式モードでは回路内圧の低下が見られる。
【この波形を発見した時の対応】
・回路の各接続部にゆるみがないか確認する。
・カフ圧の設定は適切か確認する。
回路内の水滴
【見分けるポイント】
・圧波形、フロー波形に注目してみる。
・各波形において不規則で細かい揺れが出現する。
【この波形が示す事態】
・回路内に溜まった水滴の上をガスが流れ、水面がなびく事でこの様な波形が描かれる。
・気道内分泌物が多量に存在する場合でも起こり得る。
・呼吸器がこの圧やフローの『揺れ』を、『患者の吸気努力』と誤認識してしまい、不必要な送気が行われてしまう事がある(オートトリガー)。
【この波形を発見した時の対応】
・回路内の水滴を除去する。
・気道内分泌物を吸引除去する。
肺コンプライアンスの低下
従圧式モードの場合
【見分けるポイント】
・フロー波形、ボリューム波形に注目してみる。
・フロー波形は立ち上がってからすぐに流量が0L/minとなり、設定した吸気時間が経過するまで静止する。
・換気量の低下が認められる。
・圧波形に変化は見られない。
【この波形が示す事態】
・肺が硬いので、少しのガスの流入で直ぐに圧が上限値に達する為、フロー波形は立ち上がってからすぐに流量が0L/minとなる
・肺が硬くてガスが十分肺内へ送り込まれないので、換気量が低下する。
【この波形を発見した時の対応】
・従圧式モードの場合は、換気量が不足するので、血ガスやETCO2の値に注意する。
・肺損傷のリスクが高まるため、不用意に呼吸器の設定を上げることは避ける。
・体位変換、水分バランス、ECMOなどを考慮し、必要なものを準備しておく。
従量式モードの場合
【見分けるポイント】
・圧波形のみに変化が見られる。
・プラトー圧が上昇する。
【この波形が示す事態】
・従量式では換気量が変わらないので、肺傷害のリスクが高まる。
【この波形を発見した時の対応】
・肺保護のために従圧式モードへの切り替えを検討する。
・体位変換、水分バランス、ECMOなどを考慮し、必要なものを準備しておく。
肺コンプライアンスについては、コチラの記事も参考にしてみてください。
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※この記事についてはYouTube動画にて、同じ内容をアニメーションで波形を動かしながら解説していますので、参考にしてみて下さい。
その他の人工呼吸器の異常波形
人工呼吸器の異常波形はまだまだあります。
【人工呼吸器の異常波形 中級編】では、
・auto PEEP
・ミストリガー
・オートトリガー
について。
【人工呼吸器の異常波形 上級編】では、
・吸気時間ミスマッチ
・ダブルトリガー(二段呼吸)
・リバーストリガー
について解説しています。
参考にしてみてください。
※グラフィック波形の読み方について詳しく書いてある教科書はコレ!