集中治療室や循環器病棟で勤務していると、ペースメーカー植え込み後の患者さんが入院されてくることがありますよね。
ペースメーカーは普段から調べていたり見ておかなければ、何を確認したらいいのかさえ分からないと思います。
今回はペースメーカーの患者さんの担当になった時に確認するべきことについて紹介します。
目次
基礎疾患
担当になった患者さんがペースメーカー植え込み後の場合、まずはその患者さんの基礎疾患を確認します。
なぜ、ペースメーカーを植え込むことになったのか?です。
ペースメーカー植え込みの適応は、主なもので房室ブロック、洞機能不全症候群、徐脈性心房細動などがあります。
まだまだ他にもありますが全部紹介してたら長くなるので、コチラの記事から確認して下さい。
ペースメーカーの植え込み理由を確認しておく事で、設定していいモード、設定してはいけないモード、注意して見ないといけない心電図、など予測を立てながら考えることが出来ます。
テンポラリーペースメーカーの場合でも同じです。
術後になぜテンポラリーペースメーカーを導入することになったのか?術中に房室ブロックになったから?
など確認しておきましょう。
メーカー(会社)
ペースメーカーは多くのメーカーから販売されています。
各社それぞれが強みとしている特徴やオプション機能などは微妙に違いますが、ペースメーカーとしての基本的な機能は同じです。
ただし、何かトラブル等があった時はプログラマーと呼ばれる専用の読み取り機を使ってペースメーカーチェックをする必要があるのですが、チェック用のプログラマーはそのメーカー(会社)に合ったものを使用しなければデータの読み取りが出来ません。
私の勤めている病院では、こんな感じのやりとりがたまに起きてしまいます。
これでは二度手間になってしまうので、緊急時でもすぐにチェックができる様に担当の患者さんに植え込まれているペースメーカーの会社を把握しておきましょう。
また、院内のペースメーカー担当の臨床工学技士の連絡先と併せて、メーカー(会社)の連絡先電話番号も控えておくと安心です。
ちなみにどこのメーカーのものを使用しているのかは、患者さんが持参しているペースメーカー手帳の表紙に記載されています。
↑この手帳にはMedtronicと表記されていますね。
モード
続いてペースメーカーのモードを確認します。
モードは患者さんの基礎疾患や状態に応じて使い分けられます。
ということは現在使用されているモードを確認すれば、患者さんの疾患もだいたい予測をつける事が出来ます。
よくあるモードと基礎疾患の組み合わせは、
・VVIモード:房室ブロックや徐脈性心房細動
・AAIモード:同機能不全症候群
・DDDモード:房室ブロック
などです。
モードはペースメーカー管理の上級者になれば心電図を確認するだけでおおよそのことは分かります。
しかし普段からペースメーカーに慣れていないと難しい場合もあるので、ペースメーカー手帳の記載にてモード設定を確認しましょう。
ペーシングレート
Lower Rate(ローワーレート)とも呼びます。
これはペースメーカーに設定された、最低心拍数を担保してくれる設定項目です。
例えばペーシングレートが50回/分だった場合、患者さんの心拍数は50以下になることはありません。
(厳密に言うと、夜間などに行われるペースメーカーの自動測定中は心拍数が設定したペーシングレートを下回る事もあります。)
私は後輩や他職種の方にペースメーカーのモードを確認するときは、必ずペーシングレートも一緒に確認する様に指導しています。
これを確認しないと心電図の波形を見た時に、ペースメーカーの動作が正しく行われているのかが分からないからです。
ペーシングレートもペースメーカー手帳の記載から確認することができるので、是非おさえておいて下さい。
心電図波形
最後は心電図です。
ペースメーカーのモードやペーシングレートを確認したら、その設定通りに心電図波形が出ているかを確認します。
ペースメーカーの通常動作は簡単に言うと、
・心房をペーシングしているか、
・心室をペーシングしているか、
・心房と心室の両方をペーシングしているか、
・心房と心室のどちらもペーシングしていないか、
の、どれかに当てはまります。
心房をペーシングしている場合は、ペーシングスパイクと呼ばれる縦線が心電図上に表示され、その線に続くようにP波が出現します。
心室をペーシングしている場合は、ペーシングスパイクの線に続くようにQRS波が出現します。
心房と心室の両方をペーシングしている場合はP波とQRS波のそれぞれがペーシングスパイクの線に続くように出現します。
ペースメーカーの設定と合わない場合は、プログラマーを用いてのペースメーカーチェックを行わなければなりません。
先程も説明した通り、ペースメーカー管理の上級者では心電図を確認すれば、設定と合っているかの評価はさほど難しくはありません。
しかしペースメーカー管理に慣れていないとこの評価は難しいと思います。
分かりやすいものでは、ペーシングレート(Lower Rate)の設定よりも心電図モニターに表示された心拍数が少ない時は、何かしらのトラブルが起こっている可能性があります。
この様な場合や他にもよく分からない場合は、循環器医師か担当のMEに確認してもらって下さい。
その他の確認事項
ここまでにペースメーカー植え込み患者さんの担当になった時に確認するべき事を5つ紹介しました。
しかしペースメーカーは精密機器であり、また心臓の動作を直接制御している医療機器ですので状況や場面に応じて慎重に扱う必要があります。
特に外科的手術で電気メスを使用する場合やMRIの撮像時には上記以外の事柄も確認する必要があります。
外科的手術で電気メスを使用する場合
電気メスを使用する手術の時は要注意です。
まず基本的確認事項として、ペースメーカーは心臓の電気刺激を制御することで稼働しています。
手術にて電気メスが使用されると、その電気が高周波ノイズとしてペースメーカーに影響を及ぼし、最悪の場合心停止となる危険があります。
ペースメーカーが入っている患者さんが手術を受けることになり、電気メスが使用される場合は専用の設定に切り替える必要がありますので、手術当日までに担当の臨床工学技士まで連絡をください。
その際、どこのメーカーのものを使用されているのかの確認も忘れずに。
MRIを撮像する場合
繰り返しになりますがペースメーカーは精密機械です。
MRIを撮像する際に発生する強力な磁場により故障してしまう事があります。
しかし近年MRI対応のペースメーカーが各社から出てきており、ペースメーカー植え込み後であってもMRIを撮像することのできるタイプのものもあります。
これに該当する患者さんはMRI対応ペースメーカーの証明となるカードを必ず持っています。
入院されてきた診療科や病態からMRIを撮る可能性がある場合は、MRI対応カードの確認もしておきましょう。
ちなみにカードを持っているだけでは、MRIは撮像することはできません。
リード抵抗値の測定やその他の条件をクリアしているかの確認を行わなければならないので注意して下さい。
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一度ペースメーカーの状態をチェックしてくれませんか?