呼吸療法認定士という資格を知っていますか?
これは呼吸器内科や外科、集中治療室などで患者さんの呼吸管理を行うスタッフが、さらなるスキルアップを目指すために設けられた認定資格です。
看護師や臨床工学技士、理学療法士など多くの職種が対象となっていて、毎年約5000人もの人が受験する人気の資格となっています。
私も数年前ですが呼吸療法認定士の試験を突破し、現在も呼吸療法認定士として患者さんの呼吸管理に携わっています。
そんな現役呼吸療法認定士の私が、これから呼吸療法認定士を目指そうと考えている人向けにこの資格の概要、メリットなどについて紹介します。
目次
呼吸療法認定士とは
概要
呼吸療法認定士とは、正式名称では3学会合同呼吸療法認定士と言います。
たまに呼吸療法認定士と3学会合同呼吸療法認定士は何が違うのかと聞かれる事があるのですが、これらは同じ資格です。
※実際の臨床でも「3学会呼吸療法認定士」とフルネームで呼ぶことはほとんどありませんので、この記事でも「呼吸療法認定士」と省略して呼ぶこととしています。
ちなみに「3学会」とは、
①日本胸部外科学会
②日本呼吸器学会
③日本麻酔科学会
のことです。
これら日本を代表する大きな3つの学会(団体)が合同で創設し、定めている認定資格ですので、いかに専門性の高い資格か分かるかと思います。
同時に、深い知識と経験を持った呼吸療法認定士の存在が、いかに医療現場に求められているのかが伺えます。
その背景として、医療技術や医療機器の発達と重症患者の高齢化があげられます。
求められる呼吸療法認定士
昔に比べ医療技術・機器が発達している事で、今まで助からなかった患者さんも救える様になってきました。
それに伴い患者さんの高齢化が進み、また患者総数も増加していることで、呼吸管理を行う技術のある専門スタッフの手が足りない事が課題とされています。
呼吸療法認定士の制度により、呼吸管理に強いスタッフの育成、人材の確保の狙いもあります。
呼吸療法認定士になれる職種
対象
現在の認定制度で、試験を突破する事で呼吸療法認定士となれる職種は、
①臨床工学技士
②看護師
③准看護師
④理学療法士
⑤作業療法士
の5つの職種の方たちです。
なぜ診療放射線技師や臨床検査技師が入っていないのかはわかりません。
そもそも呼吸療法認定士制度は、各専門分野の医療職種の方たちがそれぞれの職種において呼吸療法を習熟し、呼吸管理を行う医療チームの構成とレベルの向上を目的に創設された制度です。
基礎となる職種が違えば、視点も違います。
例えば看護師さんでしたら、主に患者さんの全体的なケアの視点から。
臨床工学技士さんでしたら主に人工呼吸器など機械の視点から。
これと同じ様に診療放射線技師さんでしたら主にレントゲンやCT画像の視点から、臨床検査技師さんでしたら主に検査データの視点から意見交換や情報提供・共有をして頂けると思います。
他職種が関わる事でより良い治療を提供できると思うのですが、現在の制度では、先に述べた5つの職種が対象となっています。
条件
呼吸療法認定士を目指す為にはいくつか条件があります。
それは、①実務経験の実績と、②指定の学会・講習会などの出席です。
呼吸療法認定士の資格を取得するまでの流れを簡単に説明しますと、
・対象となる5つの国家資格(看護師、臨床工学技士など)を取得する。
↓
・それぞれの医療機関で規定の年数の実務経験を積む。
・認定委員会が認める学会や地方で開催される講習会に参加し、呼吸管理についての知識を深める。
↓
・認定講習会に参加する。
↓
・認定試験を受ける。
↓
・試験に合格すると、呼吸療法認定士の資格を取得できる。
この様な流れになります。
試験日から逆算すると、認定試験を受験する為には認定講習会を受講しなければなりません。
認定講習会を受講する為には、実務経験と学会や地方の講習会に参加しなければなりません。
学会や講習会へ参加したことの証明は、講習会終了後にもらえるポイントを計算し提出する事で行われます。
現時点では認定講習会への申請書類提出日から過去5年以内に、12.5点以上のポイントを取得していれば申し込みが可能となります。
もしまだ経験年数が足りていなくても、呼吸管理に興味があり今後呼吸療法認定士を目指す可能性があるなら、学会や地方講習会に積極的に参加しポイントを貯めておくと良いと思います。
地方講習会の種類によっては、参加しても認定講習会参加の為のポイントが寄与されないものもありますので注意してください。
ポイントが寄与されるかどうかはその講習会のパンフレットの下部に書いてあることが多いです。
呼吸療法認定士を目指すメリット
呼吸生理・管理の基礎を復習できる
呼吸療法認定士を目指すメリットはたくさんあります。
その理由の1つが、呼吸生理・管理の基礎を復習できる事です。
病院で実務として臨床業務をしていると、学生時代に勉強した内容と臨床で学んだ事がゴチャゴチャになったりしませんか?
私はそうでした。
臨床業務にも慣れ始め、少しづつ余裕が出始めたころに呼吸療法認定士の受験の為に勉強を行うことで、基礎内容の復習をする事ができました。
呼吸に関する知識のスキルアップとなる
もちろん基礎内容の復習だけではありません。
認定講習会の受講条件でもある学会や地方講習会への参加や問題集を使って勉強をしていくと、その時の自分にとっては全く初耳な内容も出てきます。
仮にも受験勉強をしているので、知らない内容だからと言って無視する訳にもいきませんよね。
今まで知らなかった内容に触れる事で、自分の中での知識の引き出しが1つ増えます。
自分がどんどんスキルアップしていっているのを実感できると思います。
他職種間での情報共有がスムーズになる
現在の医療はチーム医療の体制を取り入れており、様々な職種の人間がその専門性を活かしつつ1つのチームとして患者さんの治療に貢献します。
そこで重要となるのが他職種間での情報共有です。
お互い職種が違えば注目する視点は違います。
ですが呼吸療法認定士の試験内容は幅広く、自分の専門外の分野も学んでいかなければなりません。
私の場合だと、特に呼吸リハの分野は専門外でした。
ここをコツコツと勉強したからこそリハビリの基礎を理解でき、理学療法士さん達との情報共有がスムーズになったと感じられます。
また同じ試験を突破した呼吸療法認定士同志だからこそ、職種の壁を超えてよりお互いを信頼し易かったりします。
転職に有利
前述した通り、呼吸療法認定士は3学会が合同で認める専門性の高い認定資格です。
取得していると当然、転職の際に有利に働きます。
現在の情勢から考察しても呼吸管理に強いスタッフが多数在籍していることは、病院にとっても患者さんにとっても喜ばしい事です。
「呼吸管理が好き!」
「呼吸生理学や人工呼吸器に興味がある」
という人に是非チャレンジして欲しいと思います。
呼吸療法認定士をオススメする理由
私は個人的に呼吸療法認定士と言う資格をかなりオススメしています。
その理由はズバリ、勉強する為の環境が整っているからです。
どういう事か順番に説明していきます。
呼吸療法認定士の資格制度は20年以上前から行われており、現在も毎年約5000人の方が受験されている人気の認定資格です。
あなたの職場や同じ部署に勤めている先輩の中にはすでに資格を保有している人もいるのではないでしょうか?
その人から色々詳報を聞いたり、相談に乗ってもらえたりしますよね。
もしそんな先輩が身近にいなくても、SNSやネットで検索すればたくさんの情報が出てくると思います。
また人気の試験というのは大抵、過去問題集や参考書が多く出版社から出されています。
すでに試験に合格した人がメルカリなどに出品して安く手に入るかもしれません。
オススメの参考書がどれかわからない?
それこそSNSで検索をかければいいんですよ。
なんなら私にDM送ってくれても構いません(^^)
ちなみに私としては、参考書と問題集に加えてスマホアプリ付き、e-ラーニング動画でも隙間時間にサッと勉強ができるアステッキ社の教材は割とオススメです。
この様に勉強する環境が整っているので友人も誘って一緒に受験したいと考える人も多いと思います。
お互い切磋琢磨できるので、勉強効率はさらに上がります。
これが私が呼吸療法認定士の受験をオススメする理由です。
ここまで環境が整っていて、自分のスキルアップにもなり、その知識と技術はいずれ患者さんに還元される資格は他にないと思います。
興味のある方は、ぜひチャレンジしてみて欲しいと思います。
続いては、呼吸療法認定士の合格率や難易度、試験で何点とれば合格できるのか?について、過去のデータを元に考察してみたいと思います。
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