先日、特発性間質性肺炎の患者さんに対して、呼吸リハは無意味ですか?という質問を受けました。
これは非常に難しい問題で、実際に当院でもリハビリを導入するのか否か意見が分かれるところです。
そこで、集中治療管理に携わる機会の多い臨床工学技士の立場からの意見を述べたいと思います。
目次
間質性肺炎とは
間質性肺炎は肺胞隔壁の病変を主座として炎症をきたす疾患の総称であり、薬剤や膠原病等の原因がハッキリしている間質性肺炎と原因不明の特発性間質性肺炎(Idiopathic Interstitial Pneumonias:IIPs)に分類されます。
IIPsの中でも最も重要な疾患が特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:IPF)で、高度な肺拡散能障害および拘束性換気障害を呈する予後不良の疾患です。
5年生存率は30〜50%という報告もあり、臨床において最も問題となる間質性肺炎です。
特発性間質性肺炎に対する呼吸リハ
呼吸法の指導
口すぼめ呼吸法や腹式呼吸法の指導は間質性肺炎に対して有効な呼吸リハであると考えられます。
口すぼめ呼吸・腹式呼吸を行うことで、酸素摂取量の改善、PaO2の上昇といった効果が期待できます。
間質性肺炎では拡散障害による酸素摂取量不足が問題となるので、呼吸法の指導による呼吸リハは患者さんの予後改善に大きく関わっていると思いますね。
運動療法の導入
運動療法の導入に関しては注意が必要です。
運動療法では骨格筋の改質によって内乳酸産生を減少させ、それによる換気ドライブを抑制します。
しかし間質性肺炎から酸素摂取障害による低酸素血症が問題となっている場合運動によって骨格筋の酸素消費量を増やしてしまうと、低酸素血症を増悪させてしまう可能性があります。
酸素摂取に問題があるだけならマスクやNPPVのサポート下での運動もアリかも知れません。
しかし拡散能障害による二酸化炭素の貯留も問題となっている場合では、これらではサポートしきれません。
PaCO2やpH、代償なども考慮しなければなりません。
最後に
以上が、集中治療に携わる機会の多い私の臨床工学技士としての考えです。
初めに質問してきてくれた方は、おそらく呼吸リハの報告や論文を読んで無意味か?と思ったのでしょう。
確かに特発性間質性肺炎の呼吸リハに関するデータにはエビデンスが無いものや、予後改善における厳しい意見もあるかと思います。
しかし私は経験上、積極的にリハビリを実施していった方が、患者さんにとっても医療スタッフにとっても治療に対して積極的になり、予後改善の大きなファクターになっていると思います。
間質性肺炎は病態や症状の進行など患者さんによって様々です。
私自身まだまだ分からない事もたくさんあるので、特にリハビリの事に関しては、理学療法士さんや看護師さんによく意見を仰ぎにいきます。
その患者さんに合った治療を多職種による合同カンファレンスで話し合い、実施していくことが大切ですね。
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