人工呼吸器設定のBIPAP(BiLevel)とSIMVの違いを教えてくださいとの質問をよく受けます。
BIPAPは「二相性の」、つまりhighとlowの2種類のCPAPを設定していて、その間を強制換気するという事は理解できるが、それが具体的にどう患者さんの呼吸に影響するのかが理解できない。
という方が多いのではないでしょうか。
目次
SIMVの基本的な動作
自発呼吸がない場合
・人工呼吸器に設定した呼吸回数分だけ、強制換気を行う。
・強制換気は、設定した吸気圧・吸気時間に従って送気される。
・自発呼吸がない場合のSIMVモードはACモードと同じ動作となる。
自発呼吸がある場合
・人工呼吸器に設定した呼吸回数分の強制換気は担保され、それ以上の自発呼吸に対しては補助換気(PS)を行う。
・補助換気(PS)については設定された吸気時間は関与せず、患者のタイミングで呼気に移れる。
BIPAP(BiLevel)の基本的な動作
自発呼吸がない場合
・人工呼吸器に設定した回数分だけ、強制換気を行う。
・強制換気はLow PEEP(普段設定しているPEEP)からHigh PEEPまでを行き来する。
・自発呼吸がない場合のBiLevelモードはACモードと同じ動作となる。
・つまり自発呼吸がない場合はSIMVモードとも同じ動作となる。
・BIPAP(BiLevel)モードの低圧相時間を短く、高圧相時間を長く設定することでAPRVモードとなる。
自発呼吸がある場合
・人工呼吸器に設定した呼吸回数分の強制換気は担保され、それ以上の自発呼吸に対しては補助換気(PS)を行う。
・BIPAP(BiLevel)モードでは呼気のタイミングはもちろん、吸気のタイミングでも自発呼吸に対する補助換気が可能。
※例えば強制換気における吸気時間の設定が1.0秒で、吸気開始から0.7秒のタイミングで患者さんがさらに「吸いたい」場合は、吸気設定したPS値まで後押ししてくれる。
・わかりやすく言えば、「患者さんの吸気努力を無視することは全くなく、いつでも吸えるモード」である。
・これを「同調性が良い」と言い換える事もできる。
SIMVとBIPAPの違いまとめ
上記の説明のように、理屈ではBIPAPは不整な呼吸パターンを示し同調性を得にくい重症呼吸不全患者に対して有効性を発揮する特徴です。
しかしこのモードも完璧ではないので、一定の割合で非同調を認める事もあります。
腹臥位療法中の患者におけるSIMVとBIPAPの無作為試験では「BIPAP群で酸素化が改善したものの、鎮静薬の使用量は両群間で有意差がなかった」という報告もあります。
ただし現段階ではBIPAPは他のモードと比較して、各パラメーターを悪化させる事が少ないモードである事は示唆されているので、自発呼吸を適切に保ちながら呼吸管理をする上で積極的に使っていきたいモードだと考えます。
最後にこの記事・動画を作成するにあたり、参考にした教科書を紹介します。
INTENSIVIST 2018 Vol.10 No.3 (特集)人工呼吸器です。
621ページにはSIMVを、631ページにはBiLevel(BIPAP)について詳しく書かれています。
もちろんその他の応用的なモードやVCV・PCVなど基礎的なモード、非同調などについてもエビデンスを交えながら詳しく書かれていますので、人工呼吸器に携わる部署に勤務されている方は絶対に持っておいた方がいいと言い切れる一冊です!
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