冠静脈とは、冠動脈から心筋に灌流した血液が再び静脈系へと還流する為の血管です。
冠動脈の解剖は、循環器系の病棟やオペ・カテなどで必ず覚えておかなければならない項目の1つですが、「冠静脈」については何故か疎かにされやすく、キチンと覚えている人もあまり多くありません。
せっかく冠動脈の解剖とAHA分類分類を覚えたなら、ついでに冠静脈も覚えておいて欲しいので、冠静脈の各枝の名称と覚え方と簡単にまとめてみました!
目次
背面から見た冠静脈
冠静脈の解剖は、冠静脈洞(CS:Coronary Sinus)から順番に、血液の流れる方向と逆向きに覚えて行くと覚えやすいです。
さらに冠静脈は、大心臓静脈・中心臓静脈・小心臓静脈をメインに考え、そこから伸びる枝を追加で覚えていくのがコツです。
なので心臓を背面から見た図を用いて、CSから血液の流れと逆向きに説明していきます。
大心臓静脈とそこから伸びる枝
・大心臓静脈
(GCV:Great Cardiac Vein)
・後左心室静脈
(PVLV:Posterior Vein of Left Ventricle)
・左心房斜静脈
(OVLA:Oblique Vein of Left Atrium)
(マーシャル ベイン:Marshall Vein とも言う)
・左辺縁静脈
(LMV:Left Marginal Vein)
※さらに心臓の前壁の方へと続いていきます。
中心臓静脈
・中心臓静脈
(MCV:Middle Cardiac Vein)
(後室間静脈:Posterior Inter-ventricular Veinとも言う)
小心臓静脈とそこから伸びる枝
・小心臓静脈
(SCV:Small Cardiac Vein)
・右辺縁静脈
(RMV:Right Marginal Vein)
※さらに心臓の前壁の方へと続いていきます。
正面から見た冠静脈
大心臓静脈からの続き
・前室間静脈
(AIV:Anterior Inter-venticular Vein)
※GCVからLMVが枝分かれし、そのGCVの先にあるのがAIVです。
小心臓静脈からの続き
・前右心室静脈
(AVRV:Anterior Vein of Right Venticule)
※SCVからRMVが枝分かれし、その先にあるのがAVRVです。
冠動脈と冠静脈の位置関係
参考までに冠動脈AHA分類の位置と、それに対応する冠静脈の位置を示しておきます。
正面
※ #3〜#4(点線)は心臓の裏側です。
背面
冠静脈 名称まとめ
心臓を正面から見た像で、冠静脈をまとめます。
点線で示しているのは心臓の裏側の冠静脈です。
・冠静脈洞
(CS:Coronary Sinus)
・大心臓静脈
(GCV:Great Cardiac Vein)
・後左心室静脈
(PVLV:Posterior Vein of Left Ventricle)
・左心房斜静脈
(OVLA:Oblique Vein of Left Atrium)
(※図では左心耳とのカブって見づらいので省略)
・左辺縁静脈
(LMV:Left Marginal Vein)
・前室間静脈
(AIV:Anterior Inter-ventricular Vein)
・中心臓静脈
(MCV:Middle Cardiac Vein)
・小心臓静脈
(SCV:Small Cardiac Vein)
・右辺縁静脈
(RMV:Right Marginal Vein)
・前右心室静脈
(AVRV:Anterior Vein of Right Ventricle)
最期に
臨床で冠静脈の解剖や位置などを活用する場面は確かに少ないです。
せいぜい、心臓アブレーション時かCRTDの左室リードを挿入する時くらいです。
しかし冠静脈の位置を覚えておくと、冠動脈AHA分類で還流した血液がどこに還るのかが分かり、解剖の理解がより深まります。
覚えておいて損はないハズですよ(^^)
冠動脈の方だけに目が行きがちでCSの方は厳かにしていたので勉強になりました。
ちなみにもう一つ質問なのですが、冠静脈洞の大きさに正常値はありますか?
コメントありがとうございます(^^)
冠静脈洞の大きさの正常値は私も知らなかったんですが、これを期に調べてみたら
全長20〜65mm、径6〜16mmという答えがありました。
PLSVCの残存や長期の右房負荷によって拡大する傾向があるようです。
解答、ありがとうございます!
私はネットで探しきれなかったので助かりました
図々しいのは承知なのですが、私も今一度理解を深めたいので良ければ参考にされた文献・サイトを教えてほしいです!
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwiCxMSG99HsAhVMZt4KHTtoAcgQFjABegQIAhAC&url=https%3A%2F%2Fkanazawa-u.repo.nii.ac.jp%2F%3Faction%3Drepository_uri%26item_id%3D26364%26file_id%3D26%26file_no%3D1&usg=AOvVaw1pTqBmvdVbsty1mqDN8iJa
このURLで検索するとPDFが表示されるかと思います。
「虚血性心疾患における冠循環・心筋代謝の計測」です。(^^)
ありがとうございます!!
しっかり勉強させて貰います!!
冠動脈と冠静脈とは併走していますが、ガス交換はどのようにされているのでしょうか 肺と同じような浸透圧関係でしょうか ただ血管の密度からすると肺のようにはいかないと思うのですが・・・
肺胞を介してのガス交換は外呼吸であり拡散の原理によって行われますが、冠動脈と冠静脈のガス交換は直接的には行われず心筋組織を介した内呼吸で行われます。
酸素-ヘモグロビン親和性により血液から組織へ酸素の受け渡しが行われます。