A-aDO2(エー エーディーオーツー)という言葉を知っていますか?
これは日本語では肺胞気動脈血酸素分圧較差のことを言います。
字の通り肺胞内にある酸素分圧と、動脈血中の酸素分圧の差のことを表しています。
なぜ肺胞と動脈血で酸素分圧が異なるかというと、そこにはシャント血流というガス交換されていない血流が存在するからです。
これについてわかりやすくまとめます。
目次
A-aDO2と正常値
A-aDO2のはじめの「A」は肺胞気を、ふたつ目の「a」は動脈血を表しています。
(血液ガスの分野では、気体を英語の大文字で、液体を小文字で表記するというルールがあります。)
そしてDO2は、酸素分圧のDifference(差・違い)を意味しています。
これらをまとめて、肺胞気-動脈血 酸素分圧較差と言います。
前回の記事で、肺胞内の酸素分圧の正常値は110mmHg、動脈血中の酸素分圧の正常値は100mmHgと説明しました。
この差、10mmHgがA-aDO2の正常値となります。
A-aDO2の要因 ①気管支静脈血
肺胞気と動脈血の酸素分圧に10mmHgの差が生じる理由はいくつかあります。
気管支静脈血はその1つです。
気管支は大動脈から伸びた気管支動脈から栄養されており、気管支静脈は副半奇静脈・奇静脈に還流しますが、数%は肺静脈に直接還流します。
肺静脈には肺でガス交換されたばかりの酸素を多く含んだ血液が流れており、ここに気管支を栄養したあとの気管支静脈血が合流することで酸素分圧が若干低下する事になります。
A-aDO2の要因 ②テべシウス静脈
テベシウス静脈は、冠状動脈から心筋を栄養した後の血液が一部冠静脈洞を介さずに、心臓の内腔に直接流れる極めて小さなシャントです。
主には右心房に還流する静脈血ですが、中には左心系に還流するものもあります。
左心系に静脈血が還流するということは、わずかながら動脈血酸素分圧は低下し、肺胞気酸素分圧との差ができてしまいます。
A-aDO2の要因 ③肺シャント様血流
先に紹介した2つの要因はどちらも身体の構造上、静脈血が動脈内に合流してしまう事による、いわゆる解剖学的シャントでした。
最後に生理学的シャントである、肺シャント様血流を紹介します。
どんな健康な人でも全ての肺胞が完璧に拡張し、毛細血管の血流も全く滞っていないということはありません。
約3億個あると言われる肺胞のうちいくつかは不十分な拡張であったり、血流が良くない部分が存在し、この部分ではガス交換が不十分となっています。
肺胞気のこの様な部分では、酸素を動脈へ受け渡す事が出来にくいので、わずかなA-aDO2が生じます。
このことを肺シャント様血流と呼び、ここまでで紹介した3つの要因を合計すると、約10mmHgほどの差となります。
呼吸状態が悪化した場合のA-aDO2
繰り返しになりますがA-aDo2は、肺胞と動脈血の酸素分圧の差です。
仮にこの差がなかったとすると、それは肺胞から血液への酸素の受け渡し(ガス交換)が完璧に行われているに近い状態であるので、肺と毛細血管のコンディションは非常に良いという事になります。
逆に肺胞から血液への酸素の受け渡しが上手くいっていないと、肺胞と動脈血の酸素分圧には差が生じます。
要するに肺線維症やARDS(急性呼吸窮迫症候群)などの呼吸器疾患ではA-aDO2の値は大きくなるんです。
吸入気酸素分圧・肺胞気酸素分圧は高いはずなのに、動脈血酸素分圧が低い場合には、A-aDO2が上昇している可能性を考えます。
【参考にした教科書】
イラスト付きでわかりやすく、とても簡単な言葉を使って説明で説明してくれているので、すごくオススメです!
[…] 丸暗記しておく ※ 0.8は呼吸商であるので丸暗記しておく ※ A-aDO2についての解説はコチラの記事を参照 例題4【動肺・静肺コンプライアンスと気道抵抗の計算】 […]