人工心肺装置は心臓手術の際に無くてはならない生命維持管理装置です。
その構成は非常に複雑で、なかなか分かりにくいと思います。
そこで今回、人工心肺装置の一般的な構成と回路図をわかりやすく簡略化したイラストを作ったので、それを使って説明します。
目次
人工心肺装置の概要
これは、当院で扱っている人工心肺装置の回路図を重要なトコだけ簡略的に表したものです。
人工心肺装置の各ポンプ・構成品の位置・回路は各施設によって様々だと思いますが、大まかな役割は同じです。
一覧で見るととても複雑でわかりにくいと思いますが、それぞれのポンプ・構成品ごとに分け、回路を血液の流れる方向へ順番に見ていくと、その全貌がハッキリ見えてきます。
血液(メイン)ポンプの回路図
血液ポンプは人工心肺装置の数あるポンプの中で、主役(メイン)となるポンプです。
① 脱血管・脱血回路によって患者の血液を脱血し、リザーバー(貯血槽)へ貯められる。
② リザーバーに貯められた血液は、血液ポンプによって吸引され、↓
③ 熱交換機・人工肺へと送り出される。
④ その後に動脈フィルターを介して送血回路・送血管によって患者の全身へと送られる。
それぞれの構成品と人工心肺装置の役割についてはコチラを参考にどうぞ。
吸引ポンプの回路図
吸引ポンプの役割は、主に、心臓の過伸展の防止と術野での無血視野の確保です。
いくつか種類があり、それぞれ使い分けます。
① 心腔内に溜まる血液を吸引し心臓の過伸展を予防する。
② その吸引した血液はリザーバーに向けて送り出し、再利用する。
③ 心臓実質の外(縦隔など)に出血している血液を吸引し、無血視野の確保を行う。
④ 同様に吸引した血液をリザーバーに送り、再利用する。
⑤ 大動脈遮断解除前の心腔内のエア抜きをポンプによる吸引で行う。
⑥ 吸引した血液やエア(空気)はリザーバーに送られるが、リザーバーは大気解放型の構造なので問題ない。
吸引ポンプ1.は別名ベントポンプ
吸引ポンプ2.は別名サクションポンプ
と呼ばれます。
吸引ポンプ3.はサクションポンプとして術野の無血視野の確保に使用される事もあります。
心筋保護液ポンプの回路図
① 心筋保護液を吸引し、↓
② ポンプコントロール下に患者の心臓へ送り込む。
心筋保護液は患者の血液と混ぜて注入する事もあり、その場合回路はより複雑になってきます。
(今回の回路図では省略しています。)
血液濃縮器ポンプの回路図
血液濃縮器は人工心肺中の水分バランスの管理目的で使用されます。
③ リザーバーからの血液を一部吸引し、↓
④ ヘモコン(血液濃縮器)に送る。
⑤ 調節された血液は再びリザーバーへ戻る。
最後に
どうでしたか?
この様に目的に分けて回路を順番に見てみると、断然分かりやすくなったのではないでしょうか?
この他にも電解質の調整を行う場合や輸血を行う場合は、リザーバーに直接輸液や輸血、薬液を落とし込みます。
血圧コントロールの為に昇圧剤や降圧剤をリザーバー内に投与する事もあります。
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