臨床工学技士の数ある業務の中でも華形と呼ばれる人工心肺装置。
その機能は文字通り心肺機能を代行するだけに留まらず、他にも様々な機能を持ち合わせており、心臓手術において重要な役割を担います。
装置としては様々なデバイスが組み込まれ複雑ですが、心臓手術における人工心肺装置操作の役割はたったの5つだけです。
目次
人工心肺装置とは
人工心肺装置は心臓外科手術で使用される、生命維持管理装置です。
たくさんのポンプと付属品によって構成され、それぞれに役割があります。
英語ではCPB(Cardio Pulmonary Bypass)と表記されます。
①心肺機能の代行
言わずもがな、人工心肺装置は人工的に心臓と肺の機能を代行します。
心臓機能の代行として、ポンプを使い血液を脱血し、を全身へと送り出します。
肺機能の代行として、人工肺と酸素ブレンダーを使い血液への酸素供給・血液からの二酸化炭素排出を行います。
②体温の調節
心臓手術では代謝を抑えるために体温を下げる、
手術が終了する間際に体温を元の温度まで戻す、
という風に場面に応じて患者の体温を調節しなければなりません。
この調節は熱交換器によって行います。
熱交換器は通常、人工肺に組み込まれているものがほとんどです。
③無血視野の確保
開心術では多量の出血が必然となります。
術野が血で溢れていては、心臓外科医は手の出しようがありません。
イメージしやすく例えるなら、真っ赤な絵の具で満たされた水槽の中でプラモデルを正確に作る場面を想像してみてください。
手元は真っ赤、部品が水槽の底に落っこちる、限られた視野でどのパーツを組み立てればいいのか分からない。
こんな状況で正確に作業を行うのはまず不可能ですよね。
血液を吸引排除すれば術野は見えますが、大量の出血を全て捨ててしまうのはあまりにも勿体無いです。
そこで人工心肺装置は吸引ポンプを使って術野の出血を吸引し、リザーバーに回収することで患者の血液を再利用します。
④血液電解質の調節
心臓手術では様々な要因により血液電解質が変動します。
薬剤や輸液をリザーバーに投入し、また血液濃縮器によりリザーバー内の血液を濾過することで血液電解質の補正を行います。
患者の水分バランスの調整も行うことが出来ます。
⑤心筋保護液の注入
症例によっては心臓の拍動を停止させ、心臓を切り開き内部の修復を行う場合があります。
全身の循環はポンプで代行していますが、停止している心臓にも代謝を抑え、エネルギーを付加するといった操作が必要です。
人工心肺装置には心筋保護液供給ポンプが備わっているので、定期的に心筋保護液を注入します。
最後に
以上の目的のために私たち臨床工学技士は心臓手術において人工心肺装置を操作します。
様々なデバイスが組み合わさって一見複雑に見えてしまいますが、行っている事はいたってシンプルです。
上記の目的をいかに効率よく達成し、患者の負担を最小限に抑えることが出来るか。
これを追求することが人工心肺の醍醐味だと感じます。
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