ネーザルハイフローは挿管を避けたい場合や抜管後の呼吸補助などを目的に導入される非侵襲的呼吸療法です。
加温加湿効果により低侵襲で高流量な換気補助を行うことが出来ます。
今回はネーザルハイフローシステムに無くてはならない加温加湿器、Fisher&Paykel社製【MR850】の設定とアラームの詳細およびその対処法を徹底解説します。
目次
ネーザルハイフロー加温加湿器の設定
画像の加温加湿器は、当院でネーザルハイフローを導入する場合によく使用されるFisher&Paykel社製【MR850】です。
このタイプの加温加湿器にはボタンが3つあります。
それぞれ、
①電源ボタン、
②モード選択ボタン、
③消音ボタンです。
これらについて説明していきます。
電源を入れる
電源を入れるには、電源ケーブルをコンセントに差し、電源ボタンを一度押します。
(バッテリーはありません。)
電源をONにすると、数値を表示する画面に[88.8]→[850]→[721]と表示された後、温度が表示されます。
初めの数字は立ち上げ時のセットアップの様なもので、この加温加湿器のモデル番号やソフトウェアのバージョンを示しています。
治療に直接関係するものではないので特に気にしなくてOKです。
その後に表示される温度は口元の温度を示しています。
実際に患者さんに使用する時は、前回の記事で説明した様に、チャンバを前もってウォーミングアップさせておかなければなりません。
侵襲モードでは35.5℃以上、非侵襲モードでは28℃以上になる様に温めます。
通常10〜20分程度でこの温度まで到達します。
電源を切りたい時は、同じ電源ボタンを、「ピッピッ」と音が鳴るまで長押しします。
モードを選択する
モードは
①侵襲モードと
②非侵襲モードがあります。
モード選択ボタンを長押しするとそれぞれのモードに切り替わります。
この加温加湿器は患者さんに最適な温度と湿度の呼吸補助を行うためにチャンバと口元の温度を自動で調節してくれます。
侵襲モードでは、分泌物浄化作用の維持、感染リスクの軽減、最適なガス交換能を維持する様に稼動します。
具体的には口元で37℃、44mg/Lになる様に調節されます。
非侵襲モードでは、心地よさと適合性、湿気の減少を最低限に抑える、分泌物の浄化作用を維持する様に稼動します。
具体的には口元で34℃、32mg/Lになる様に調節されます。
※挿管患者に対し非侵襲モードで稼動させる事は避け、必すモードを確認して下さい。逆もまた然りです。
消音ボタン
何かのアラームが鳴っている時には、このボタンで消音することが出来ます。
またこの消音ボタンを長押しする事で、チャンバの温度、その次に口元の温度が表示され、確認することが出来ます。
診断メニュー
消音ボタンとモード選択ボタンを同時に長押しすると、各診断メニューの値を表示させることが出来ます。
1番初めに[HC]と表示されるのが、湿度補正機能の設定であり、HC機能により適切な加温加湿状態を維持することが可能です。
[HC]と表示されたすぐ後に、もう一度消音ボタンを押すと通常[— A —]と表示されます。
これはHC機能がAuto(自動)となっている事を表しています。
さらにこの状態でモード選択ボタンを押すと、HC機能を手動モードに切り替える事も出来ますが、ほとんどの場合でAutoで問題ありません。
その他、診断機能では流量や電力など様々な項目を確認することが出来ます。
加温加湿器のアラーム
高/低湿度アラーム
肺のマークのところが光るのは、高湿度アラーム、または低湿度アラームです。
表示温度が41℃以上になると高湿度アラームとして警報音が鳴り、チャンバと回路の加熱を停止します。
また侵襲モード時であり、表示温度が35.5℃以下になると低湿度アラームが点灯します。
この時、ランプが点灯してから警報音が鳴るまでは時差があります。
①低温
②外気温による冷却
③ガスの流れが強すぎたり弱すぎる
といったことが考えられ、原因を除去して様子をみます。
水供給不足アラーム
チャンバのマークのところが光るのはチャンバ内の水量が不足している事を警報します。
給水状態を確認して下さい。
温度プローブ外れアラーム
回路内の温度を測定している温度センサーのプローブが正しく接続されていない事を警報します。
温度センサーのプローブとは、加温加湿器本体の右側に接続する青色のコネクターです。
この接続状態を確認して下さい。
ヒーターワイヤー外れアラーム
ヒーターワイヤーアダプタか、呼吸回路が正しく接続されていない事を警報します。
ヒーターワイヤーのプローブとは、加温加湿器本体の右側に接続する黄色いコネクターと、回路の根本に接続されるケーブルです。
この接続状態を確認して下さい。
チャンバープローブ外れアラーム
侵襲モードでは、チャンバ温度が32℃以下に低下、
非侵襲モードでは、チャンバ温度が28℃以下に低下した事を警報します。
チャンバ温度プローブが外れている、または破損している可能性もあります。
チャンバ温度プローブとは、加湿水を溜めるチャンバの出口付近の回路に差しているプローブです。
回路側に接続する温度プローブの状態を確認して下さい。
口元プローブ外れアラーム
口元温度が40秒間で1℃低下した場合、またはウォームアップ時に口元温度が1℃低下した場合に警報します。
口元温度プローブが外れている、または破損している可能性もあります。
回路に接続する口元プローブの状態を確認して下さい。
システムエラー
注意マークにランプがつくのは、機械のシステムエラーです。
患者さんに使用している場合は直ちに使用を止め、本体を交換して下さい。
よく鳴るアラームの原因
患者ベッドの真上にエアコンがあり、それによる外気温で回路が冷却され低湿度アラームが鳴ることが多い印象です。
こう言った場合に当院では回路にタオルをかぶせ、冷気が直接回路に当たらないようにしたりして工夫しています。
またガス流量が強すぎる場合にも低湿度アラームが鳴ることがあります。
加温加湿器の温度が上げるか、可能であればガス流量を少し落とします。
この様に加温加湿器のアラームで困った時には原因を除去する様に調整し、それでも直らない場合は院内の臨床工学技士に相談してみて下さい。
お尋ねします。
チャンバーブローブがきちんとはまっておらず、不完全で宙ぶらりんのときの酸素化影響を教えてください。加湿器温度は36℃台で、再固定して、37.8まで上昇しました。ハイフロー装着してから、酸素化あがらず、50リットル、70パーセントまであげていました。
ネーザルハイフローでは、ご存知の通り通常の吸気流速よりも遥かに大きい量を流しています。この為チャンバープローブが宙ぶらりんで正しく温度コントロールか出来ていなかったとしても、直接的に酸素化に掛かる影響は極めて少ないと考えます。
ひとつ否定出来ない事柄を挙げるとすれば、チャンバーの温度が低い事で飽和水蒸気量が小さくなり、さらに回路内口元が温められる事で相対湿度が低下します。
加温加湿が不十分な状態で数十Lのフローを与えられた患者は鼻腔に痛みを感じ、息堪えをした事によりガス交換が不十分で酸素化が上がらなかった可能性も考えられます。