先週はペースメーカーのセンシング感度についての解説をしました。
そこでチラっとだけ説明した周波数帯域フィルターとスルーレートについて、詳しく教えてほしいといったコメントが来たので解説します。
目次
センシングと誤認識
ペースメーカーは心臓の収縮を感知して、自己心拍を認識する機能をもっています。
繰り返しになりますがこれがセンシングと呼ばれる機能です。
基本的にはR波をセンシングすることで自己心拍を認識しますが、実際にはR波意外にもP波やT波、体外からの電磁波も捉えてしまい、これらをR波と誤認識してしまう事があります。
バンドパスフィルター
上記の様なR波意外のものとR波を区別する為に、バンドパスフィルター(周波数帯域フィルター)が設定されています。
バンドパスフィルターは特定の周波数帯域のみを通すフィルターで、例えばR波の周波数は約50Hzなので、前回お話ししたセンシング感度(ペースメーカーの目)に捉えられた電位もこの周波数帯域から外れているとR波とは認識されません。
スルーレート
スルーレートは電位の単位時間あたりの電位変化率を表しています。
P波やR波のスルーレートは0.5V/s以上ですが、T波のスルーレートは0.5V/s未満です。
バンドパスフィルターと同様に、センシング感度に捉えられた電位がこのグラフ曲線にマッチしない場合は、PまたはR波以外のものと認識されます。
また、P・R波のスルーレートのグラフから考えて、例えば一度センシング感度にかかった電位が、折返し地点でもう一度センシング感度にかかったとしても、それは同一のスルーレートの範囲内なので、カットされます。
仮に折り返し地点の電位まで許容してしまうと、それは「ダブルカウント」になってしまいます。
この様にバンドパスフィルターやスルーレートを検出することにより、心筋の電位を選択的に認識しています。
ちなみにこれらは初めから初期設定として機械に組み込まれているものであり、センシング感度の様に設定を調整することは出来ません。
以下の教科書を参考にしました。
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