多くの手術で電気メスは必須の器具です。
電気メスを使用すると、サージカルスモークと呼ばれる煙が発生します。
このサージカルスモークには発癌性物質が含まれている可能性があるというのです。
手術室で働く医師、器械出し看護師、臨床工学技士に注意喚起です。
目次
サージカルスモークとは
手術室勤務の経験が長い方にとっては慣れっこかも知れませんが、初めて手術室に入ったときの事を思い出してみてください。
電気メスで肉の焼ける匂いに戸惑ったことはなかったですか?
あの匂いの正体こそ、サージカルスモークです。
サージカルスモークとは術中に生体組織を焼灼・凝固・切開すると発生するガスのことで、1gの生体組織に電気メスを照射するとタバコ6本分の煙が発生すると言われています。
電気メスによるスモークには発癌性物質が含まれている?
米国では以前からこのサージカルスモークを吸わないように警告されており、排煙装置の設置が推奨されています。
欧米では義務つけている国もあるそうです。
それもそのはず、オハイオ州オタバイン大学の看護教授のKay Ball氏の報告によると、サージカルスモークを長時間吸い続けた周術期看護師の呼吸器疾患発生率は一般人の約2倍にまで及んだそうです。
岩手医科大学附属病院の櫻井滋先生も「間違いない」と述べています。
米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は「サージカルスモークには様々な有毒ガス、有毒蒸気、一酸化炭素、多環芳香族炭化水素、ベンゼン、シアン化合物、ホルムアルデヒド、生存細胞、非生存細胞、ウイルス、細菌などの微粒子が含まれる。」
との調査結果を発表しています。
外科医よりも器械出しスタッフの方が、よりスモークに曝露されている
同じくオタバイン大学看護教授のKay Ballによると、「多くの場合、サージカルスモークの曝露量は、外科医よりも看護師のほうがはるかに多い。
周術期看護師や器械出し専任看護師(Surgical Technician:ST)、麻酔看護師は、サージカルスモークが充満した手術室で毎日働いているのだ。」
と嘆いています。
また、マサチューセッツ大学の外科医Christian DiPaola氏は
「外科医は週の2日ないし3日を手術に充てることが多いが、手術室看護師やSTは一般的に週40時間も手術室にいる。」
と言います。
なぜ日本ではあまり知られていないのか
アメリカでも多くの研究者が様々な研究結果を報告していますが、それでもまだ十分な対策がとられていないのが現状です。
懐疑論者の意見としては、「サージカルスモークが医療従事者にとって脅威というのは排煙装置メーカーによる誇張だ。大した問題でもないのにむやみに騒ぎ立てている。」とのこと。
この様な現状の中、医療にまだわずかな遅れをとっている日本でこの問題が取り上げられるのは少し先になりそうですね。
私の務めている病院でもこの様な問題は聞いたことがありません。
排煙装置を紹介
いま注目の排煙装置を紹介します。
・Pneumo Clear
このニューモクリアーストライカーは圧力変動を感知し、操作を制御することで積極的に煙を排出します。
・Neptune E-SEP
ネプチューンの特徴は電気メス先のブレードの付近に吸引スリーブがあり、サージカルスモークの発生源に近い所で排煙が行われます。
・PUREVAC TURBO
この吸煙器は小型なため、日常的にサージカルスモークが出るような所ではない部屋にも置くことができます。
フィルターを変えるだけで、長期の無臭環境を保てます。
・Forcus 3000UCV
手術室などでは天井に排煙装置を設置しなければなりません。フォーカス3000は既存の手術室への設置も可能だそうです。
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