皆さんは自分の携わった治療・投薬・看護・理学療法・医療機器の操作が、
どのように診療報酬として病院に還元されているか知っていますか?
医療事務の方ならこの辺りに詳しいと思いますが、
現場で医療行為を行っているスタッフは意外にこの辺りの問題を疎かにしがちです。
私もそうでした。
そこで今回、医療行為と診療報酬について勉強したので知識をシェアしたいと思います。
目次
そもそも診療報酬とは
例えばとある患者さんが具合が悪く、外来を受診したとします。
そこで診察・投薬などの医療行為が行われると、
患者さんは会計時にいわゆる「治療費」を病院に支払います。
ここで保険証を提示すると、治療費は3割で済みます。
残りの7割は国民健康保険や健康保険組合などの「保健者」という機関が
病院に支払っています。
この3割と7割を足した病院の収入となる合計が
診療報酬と呼ばれているお金です。
診療報酬は医者の収入ではなく、「病院の収入」です。
なのでそこから医師・看護師や臨床工学技士などのスタッフの給料、
病院の建物自体の維持費・光熱費、薬を揃えておく目的、
などに振り分けられます。
実際は各医療行為に対して点数が定められているので、
その点数の合計から診療報酬の総額が決定されます。
1点につき10円で計算します。
例題
ここで実際の例を用いて考えてみます。
ある患者さんが胸痛で救急外来にやってきました。
そこで経皮的ステント留置術(PCI)を行った場合、
診療報酬点数はどうなるのか?という問題です。
経皮的ステント留置術に対する診療報酬点数の区分は
診断された病名によって3つに分けられます。
①急性心筋梗塞:34380点
②不安定狭心症:24380点
③その他 :21680点
※一方向から造影して75%以上の狭窄があるというのが
経皮的ステント留置術の診療報酬の絶対条件です。
※ちなみに手術に伴う画像診断及び検査の費用は算定されません。
(含まれています)
①の急性心筋梗塞に対するステント留置術で診療報酬点数を獲得する為には
以下【ア〜エ】の条件を全て満たさなければなりません。
ア)CABG後24時間以上が経過している
イ)【心筋トロポニン(TnT)】、【心筋トロポニンI】、【CK-MB】
のどれかが1つでも高値
ウ)【胸痛などの虚血症状】、【新規のST-T変化か左脚ブロック】、
【異常Q波】、【エコーでの壁運動異常】、【CAGでの冠動脈内血栓】
のどれかが1つでも認められる
エ)【発症から12時間以内に来院し、来院からバルーンカテによるdoor to balloon timeが90分以内】、【発症から36時間以内に来院し、心原性ショックと診断】
のどちらか1つを満たす
②の不安定狭心症に対するステント留置術で診療報酬点数を獲得する為には
以下【ア〜ウ】の条件を全て満たさなければなりません。
ア)ガイドラインにおける不安定狭心症の分類で、ClassⅠ、ClassⅡ、ClassⅢである
イ)ガイドラインにおけるACSの短期リスク評価が高〜中等度である
ウ)来院から24時間以内に手術が開始されている
③のその他の症例に対するステント留置術で診療報酬点数を獲得する為には
以下【ア〜ウ】のどれか1つでも満たしていればOKです。
ア)一方向から造影して90%以上の狭窄がある
イ)eAPの原因と考える狭窄病変がある
ウ)虚血の評価のための検査を実施し、虚血の原因と確認されている狭窄病変がある
必要な検査をした上で、上記のどの区分に当てはまるのかを判断します。
①の急性心筋梗塞に対するPCIでは診療報酬点数が高い分、
条件が厳しく設定されています。
しかし、①のア〜エを全て満たすことができれば、診療報酬点数34380点、
つまり34万3800円の病院収入となるのです。
物品費や夜間対応料、入院費なども加算される
経皮的ステント留置術を行う為にはシース、ワイヤー、バルーン、ステントなど
多くの物品を使用します。
償還がとれている物品であれば診療報酬とは別に物品費は国から支払われ
病院に還元されます。
しかし償還のとれなかった物品は病院の負担となってしまいます。
夜間の救急外来からの患者であれば夜間対応として500〜700点が加算されます。
さらに治療後の経過観察の為に入院したり、追加の検査・治療が必要な場合、
診療報酬点数は加算されます。
※本投稿の区分の説明は、理解を深めるため簡単な言葉を用いて表しています。
より詳しく正確に調べたい方は【診療早見表】等を参考にしてみてください。
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